化野念仏寺 ~ゆかりの人を想い、偲ぶお寺

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京都の人気の観光スポット・嵐山から3キロほど山合いを歩くと、そこは奥嵯峨。この辺りまで来ると、訪れる人も少なく、古都の静けさに浸ることができます。

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京都の街中とはまた違った京都らしい風情があるこの奥嵯峨には、平安時代の頃から無数の石仏や石塔が立ち並ぶお寺があります。そのお寺の名は「化野念仏寺(あだしのねんぶつじ)」。 今回は美しい竹林に囲まれた浄土宗のお寺「化野念仏寺」の話をしましょう。

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弘法大師・空海が開いたお寺 

化野念仏寺は、その寺名にもあるように嵯峨野の化野地区にあります。“化ける野”と書いて“あだしの”と読むのですが、「あだし」とは仏教の言葉で、“はかない”とか、“むなしい”という意味があるそうです。

この辺りは昔から、鳥辺野(とりべの)、蓮台野(れんだいの)とともに京都の風葬地だった場所で、もとは「あだしなる野辺」と呼ばれていて、それがいつしか「化野」になったと言われています。

西行法師や吉田兼好は化野を“人生の無常さ”として喩えていますが、この地は古来より、人々が亡き人との永遠の別れを惜しんだ場所なのです。

この化野にお寺を建てたのは、真言宗の開祖・弘法大師空海です。

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今から1200年ほど前、化野に訪れた空海が目にしたものは、野に散乱した無数の人骨と石仏でした。その光景に心痛めた空海は供養もされず、野ざらしにされた死者の魂を弔うために、千体の石仏を埋め、密教の5つの知恵(法界体性智、大円鏡智、平等性智、妙観察知、成所作智)をそなえた五智如来(ごちにょらい)の石仏を立てて、五智山如来寺を建立しました。これが化野念仏寺の始まりだとされています。

五智山如来寺は空海が開いたわけですから、真言宗のお寺なのですが、化野念仏寺は浄土宗のお寺です。何故、宗派が変わったかと言うと、鎌倉時代になると五智山如来寺は荒廃してしまい、それを知った浄土宗の開祖である法然上人が念仏道場として再建したために、浄土宗に変わったのです。その時、寺名も「華西山東漸院念仏寺(かせいさんとうぜんいんねんぶつじ)」と改められ、以降、人々から「化野念仏寺」と呼ばれるようになりました。 化野念仏寺は日本仏教界の名僧が2人も関わったお寺だったのですね。

西院の河原を埋め尽くす無数の無縁仏

現在、化野念仏寺の境内には約8,000体もの石仏や石塔が立てられており、これらはすべて、かつて化野に葬られた人たちのお墓です。何百年という長い歳月の間に、無縁仏となった石仏がお寺の周辺に散乱していたところ、明治中期の頃に住民の力で集められ、祀ったそうです。

石仏や石塔が埋め尽くすように立ち並んでいるその中央に、釈迦坐像と十三重の石塔が置かれています。それはまるで、無縁仏となった人たちがお釈迦様の声に耳を傾けているかのようです。

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この場所は、空也上人の作と言われている「賽の河原地蔵和讃(さいのかわらじぞうわさん)」の一節に、“一重つんでは父の為、二重つんでは母のため…”とあるように、親より先に亡くなった子どもたちが罰として石を積み上げた河原の有様を想わせることから、近くにある京都の地名「西院(さい:現在は“さいいん”と読まれることが多い)」に掛けて、「西院の河原(さいのかわら)」と名付けられています。

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因みに「西院(さい)」とは、平安時代の第53代天皇・淳和(じゅんな)天皇の離宮「淳和院」があったところで、その場所が皇居の西の方角に当たることから“西院”と呼ばれました。

いろいろなお地蔵さまに出会える

この化野念仏寺には、いろいろなお地蔵さまが祀られています。人々を苦しみから救う「お迎え地蔵」や、病気や悪いことから守ってくれる「延命地蔵尊」。水子になった子どもたちを、親に代わって守り、救いを与える「水子地蔵」。 そして、このお地蔵さまにはどのうようなご利益があるのかわかりませんが、日本映画の創成期から骨太な作品を作り続けた内田吐夢(うちだ とむ)監督が、映画『大菩薩峠』の中で実際に使用し、撮影後、念仏寺に奉納された「吐夢地蔵」と呼ばれるお地蔵さまもあります。

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また、境内から美しい竹林に囲まれた石段を上がったところには嵯峨野霊園がありますが、この霊園の守護尊として「六面六体地蔵」と呼ばれるお地蔵さまが祀られています。

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このお地蔵さまは、6角柱の形状をした珍しい造りになっていて、それぞれの面には天道・人道・修羅・畜生・餓鬼・地獄の6つの世界を表すお地蔵さまが彫られています。天道から時計回り(右回り)に、「オン、カカカ、ビサンマエイ、ソワカ」と唱えながら、屋根から落ちてくる水を柄杓で受け、それぞれのお地蔵さまに水を掛けてお参りすると、罪は洗い流され、救われると言われています。

化野念仏寺には有り難いお地蔵さまがたくさん、いらっしゃるのです。

幻想的な世界「千灯供養」

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化野念仏寺では、毎年8月23日と24日の午後6時から、8,000体の無縁仏にろうそくを灯して供養する「千灯供養(せんとうくよう)」が行われます。この供養は1895(明治38)年から行われている行事で、参拝者は揺らめくろうそくの火と、その火に照らされる石仏の顔に、ゆかりの人を想い、偲びます。夜のとばりが下りると西院の河原は、火の明かりと石仏が織りなす、幻想的な世界へと変わります。

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「千灯供養」は以前は予約が必要でしたが、今は予約なしで参加することができます。もし機会があれば、一度、足を運んでみては如何でしょうか。

竹林に囲まれた静かなお寺、化野念仏寺。自然を心で感じながら、石仏に手を合わせ、自分自身に向き合う…。そんなひとときを過ごすのもいいかもしれませんね。

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化野念仏寺:京都市右京区嵯峨鳥居本化野町17 TEL : 075-861-2221

(写真・画像等の無断使用は禁じます。)

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