首振地蔵 ~祇園の芸妓さんに慕われたお地蔵さん

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世界文化遺産のひとつに登録されている清水寺。清水寺は京都で最も人気のあるお寺で、1年を通して国内外から多くの人が訪れます。その清水寺の仁王門のすぐ左手に、人で混み合う清水寺とは逆に訪れる人もほとんどいない小さなお堂が建っています。このお堂の名前は「地蔵院善光寺堂(じぞういんぜんこうじどう)」。実はこのお堂には、知る人ぞ知る、ちょっとユニークなお地蔵さんがいらっしゃるのです。今回は地蔵院善光寺堂のお地蔵さんの話をしましょう。

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清水寺の塔頭・地蔵院善光寺堂

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清水寺へと続く参道を登り切ると、堂々と建つ朱塗りの仁王門に目を奪われてしまうためか、そのすぐ左手に地蔵院善光寺堂があることに気づく人は少なく、いつもお堂はひっそりとしています。

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清水寺の塔頭のひとつである地蔵院善光寺堂は、かつては「地蔵院(じぞういん)」と呼ばれていました。創建された年代は不明なのですが、室町時代の中頃(1501-1600)に描かれた清水寺の古図『清水寺参詣曼荼羅(きよみずでらさんけいまんだら)』には、現在、お堂がある場所に六地蔵が安置された古堂が描かれていますので、地蔵院は室町時代中期より以前に既に存在していたのかもしれませんね。

1868(明治1)年の神仏分離令による廃仏毀釈の後、清水寺も境内が整理され、清水寺奥の院の南庭にあった善光寺如来堂(長野県の善光寺の本尊・阿弥陀三尊が勧請されたお堂)と地蔵院が合併し、「地蔵院善光寺堂」と改称されました。現在の本堂は1984(昭和59)年に改修されたものです。

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本堂の中には、その中央に首を少し右に傾け、右膝を立てたご本尊「如意輪観音坐像」、その右に「善光寺阿弥陀仏三尊」、左に旧のご本尊「地蔵菩薩立像」が安置されています。そして、そのちょっとユニークなお地蔵さんは?というと、それは本堂の中ではなく、本堂の外の右脇ににある小さな祠に安置されています。

首が360度、回転する!?

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さて、この50センチほどの高さのお地蔵さんが何故、ユニークかというと、実はこのお地蔵さんの首はクルリと360度、回転するのです。そのためにこのお地蔵さんは「首振地蔵(くびふりじぞう)」と呼ばれ、清水寺の七不思議のひとつにも数えられています。

首が回ると聞くと、ホラーぽくって、ちょっと気味が悪い感じがしますが、願い事のある方向にこのお地蔵さんの首をまわして拝めば、願いが叶うという言い伝えがあって、江戸時代の頃より信仰されているお地蔵さんなのです。

首振地蔵は太鼓持ちがモデルだった!

この首振地蔵は、江戸時代、祇園の幇間(ほうかん:太鼓持ち~宴席で客に座興を見せて、座を盛り上げる男芸者)だった鳥羽八(とばはち)という人物を供養するために造られた地蔵尊だと言われています。頭巾とよだれ掛けをしているために見ることができませんが、このお地蔵さんは太鼓持ちの姿を模しているために、一般的にお地蔵さんが持つ錫杖や宝珠もなく、頭には髷(まげ)があり、羽織のような着物を着て、手には扇子を持っているといった姿をしています。

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鳥羽八は親身になって祇園の芸妓さんたちの世話をしたために芸妓さんから慕われていましたが、散財し過ぎたために借金を背負い、首が回らなくなって、自ら命を絶ってしまいました。それを気の毒に思った芸妓さんたちが鳥羽八を偲んで地蔵尊を造り、善光寺堂に奉納したのです。このお地蔵さんの首が回る造りになっているのは、首が回らなくなって亡くなった鳥羽八が、あの世では首が回るようにという鳥羽八への芸妓さんたちの思いだったのでしょう。

新調された首振地蔵

首振地蔵は20年ほど前から、タクシーの運転手さんや観光ガイドなどで紹介され、好きな人の家の方角にお地蔵さんの首を向けてお願いすると恋が実るという恋愛成就にご利益のあるお地蔵さんとして、隠れた名所になりました。当初は珍しさもあって、連日、多くの人が訪れ、賑わったのは良かったのですが、一時期にあまりに多くの人が首を回したものですから、首を支えていた軸がすり減ってしまい、首が落ちてしまうことがあったそうです。

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それからは危険だといういうこともあって、首振地蔵は祠の中に納められたのですが、それでも首を回す人が後を絶たなかったために、ついに扉を閉ざして首を回すことが禁止になりました。ところがこの措置は多くの不評を買ったために、首が落ちない丈夫な首振地蔵を新しく造ることになり、それが現在、祠の前に置かれているのです。古い首振地蔵は今も祠の中に祀られ、新調された首振地蔵は“お前立ち”、つまり、古い首振地蔵の身代わりというわけですね。

清水寺はいつも人で混み合っていますが、地蔵院善光寺堂は静かで、首振地蔵の首を回す順番待ちもありません。清水寺に参る前に、ちょっと寄り道して、願い事のある方向にお地蔵さんの首を向け、願い事がしてみては如何でしょうか。

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地蔵院善光寺堂:京都市東山区清水一丁目294 TEL : 075-551-1234

(写真・画像等の無断使用は禁じます。)

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