二尊院 ~紅葉に心奪われる嵯峨野の古刹

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秋の京都には、紅葉の名所として知られる社寺が多くありますが、嵯峨野にある古刹「二尊院(にそんいん)」もそのひとつです。

秋が深まる頃、総門からまっすぐ奥に続く参道は色鮮やかなモミジのトンネルとなり、そこに歩を進めるとまるでモミジに包まれるかのようです。今回は息を呑むほどに紅葉が美しい「二尊院」の話をしましょう。

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明治までは四宗兼学の道場だった

嵯峨野の小倉山の麓にある天台宗山門派「二尊院」。二尊院は通称で、正式な寺名は「小倉山二尊教院華台寺(おぐらやま にそんきょういん けだいじ)」です。

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二尊院は平安初期の841(承和8)年に、第52代・嵯峨天皇の命により、慈覚大師円仁(じかくだいし えんにん)という僧侶が建てたとされています。因みに、円仁は比叡山延暦寺を建てた天台宗の開祖・最澄(さいちょう)の弟子です。

その後暫くして、二尊院は衰退してしまいますが、鎌倉時代初期に浄土宗の開祖・法然の弟子である湛空(たんくう)によって再興され、応仁の乱で本堂が全焼するという不運に見舞われたものの、安土・桃山時代から江戸時代にかけて豊臣家や徳川家などから寄進を受けて、寺領を拡大し、明治時代までは天台宗、真言宗、律宗、浄土宗の四宗兼学の道場として栄えました。

ため息が出るほどに美しい参道

二尊院を訪れると、最初に目にするのは、総門です。この総門は伏見城にあった薬医門(やくいもん)を移築したもので、2014年の秋に修復されました。

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風格ある総門をくぐると、そこから奥の白壁まで100メートルほど続く、緩やかな上り坂の参道がまっすぐに伸びています。

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ここは「紅葉の馬場」と呼ばれる場所で、赤や黄色に染まった木々が参道の左右から覆い被さり、まるでモミジのトンネルの中を歩いているようです。

背後にある色づいた小倉山を「紅葉の馬場」に重ねて見ると、秋の色合いは一層、深まり、ため息が出るほどの美しい風景が広がります。小倉山は、いにしえの頃よりモミジの名所として親しまれ、小倉山を詠んだ歌がいくつも残されています。

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『小倉山 峰のもみぢ葉 心あらば 今ひとたびの みゆき待たなむ』(小倉山の峰のもみじよ。あなたにもし心があるならば、もう一度、天皇がお出ましなされるまで、どうか散らずにそのままで待っていてください)

これは平安時代の公卿・藤原忠平(ふじわらのただひら:貞信公(ていしんこう))が詠んだ歌で、100人の歌人の歌を1人1首づつ選んで作られた歌集「小倉百人一首」にも選ばれています。忠平もこの鮮やかな「紅葉の馬場」と色づいた小倉山の美しさを心に染み込ませて歌を詠んだのでしょうか…。

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因みに「紅葉の馬場」はその名から、秋だけが楽しめる場所かと思われるかもしれませんが、春には、ひとつの花に130枚もの花びらがつく「二尊院普賢象桜(にそんいんふげんぞうざくら)」という大変珍しい遅咲きの桜を見ることができます。「紅葉の馬場」は秋には紅葉が、春には桜が、訪れる人の心を華やかにしてくれる場所なのですね。

ところで、もうお気づきかと思いますが、「小倉百人一首」の“小倉”は小倉山のことで、その小倉山の中腹には藤原定家(ふじわらのさだいえ)が歌を選ぶために使った山荘、「時雨亭(しぐれてい)」があったと言われています。現在、境内には「時雨亭跡」と書かれた立て札が立っているだけですが、二尊院は「小倉百人一首」にゆかりのあるお寺でもあるのです。

法然上人も惹かれた、有り難い2つのご本尊

寺院のご本尊は一尊、つまり、ひとつのご本尊をお祀りするのが一般的ですが、二尊院には「釈迦如来像」と「阿弥陀如来像」の2つのご本尊が祀られています。「二尊院」と呼ばれるようになったのは、この2つのご本尊、つまり、二尊をお祀りしていることに由来しているのです。

1521(大永1)年に再建された本堂の須弥壇に肩を寄せ合うかのように「釈迦如来像」と「阿弥陀如来像」は仲良く安置されています。

この2つの像は、鎌倉時代末期の仏師・快慶(かいけい)の作と言われています。仏像のお顔は双子のようによく似ていますが、向かって右が「釈迦如来」、左が「阿弥陀如来」です。

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「釈迦如来」は人の誕生から終焉までを見守り、来世へと送り出してくださる『発遣の釈迦(はっけんのしゃか)』。釈迦如来が挙げている右手の組み方(印相)は、不安や畏れを取り除くという「施無畏印(せむいいん)」を表しています。

「阿弥陀如来」は終焉を迎えたときに極楽浄土よりお迎えくださる『来迎の弥陀(らいごうのみだ)』。阿弥陀如来が挙げている左手の印相は、浄土に導くという「九品印(くほんいん)」を表しています。

法然上人も、この「釈迦如来像」と「阿弥陀如来像」の二尊に惹かれて、一時期、その地で暮らしたとも言われていますが、確かに何とも有り難い仏像ですね。

世の平安を願う梵鐘

二尊院には1992(平成4)年に造られた「しあわせの鐘」と呼ばれている梵鐘があります。もともとは1604(慶長9)年に鋳造された梵鐘があったのですが、老朽化したために新たに造り直されたのです。

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この「しあわせの鐘」には、自分の欲に走らず、自分の周りの人たちの幸せを願う、「忘己利他(もうこりた)」というお釈迦様の教えが込められているそうです。

この梵鐘は3回撞いて祈願するのですが、まず1回目は自分が生かされているという幸せに感謝して鐘を撞きます。そして、2回目は生きとし生けるものすべてに感謝して鐘を撞きます。最後に世界の人々の幸せを祈願して鐘を撞きます。梵鐘の名前の通り、世の中すべてが幸せで満ち溢れて欲しいものです。

この「しあわせの鐘」はいつでも、誰でも自由に撞くことができます。二尊院の鮮やかな紅葉に心奪われた後、鐘を3回撞いて、平安を願ってみては如何でしょうか。

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小倉山二尊教院華台寺(二尊院):京都市右京区嵯峨二尊院門前長神町27 TEL : 075-861-0687

(写真・画像等の無断使用は禁じます。)

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