濡髪大明神 〜今に伝わる白狐伝説

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京都・東山三十六峰のひとつ、華頂山(かちょうざん)の麓に広がる、浄土宗の総本山・知恩院(ちおんいん)。法然上人が念仏の教えを説き、その尊き生涯を閉じた念仏の聖地です。

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華頂山の緩やかな斜面に大小106棟に及ぶ伽藍が広がる境内は、下段・中段・上段の3つに分かれており、そのうちの上段は開創当初の寺域で、上人の本地身(ほんじしん)とされる勢至菩薩(せいしぼさつ)を本尊として祀られている「勢至堂(せいしどう)」が建っています。その脇を通り抜け、奥に進むと、徳川2代将軍・秀忠公の長女・千姫(せんひめ)のお墓がありますが、さらにその奥に、額束に「濡髪祠(ぬれがみのほこら)」と掲げられた小さな鳥居のある神社が見えてきます。何やら艶っぽい名称の神社ですが、この神社の名前の由来には、ひとつの不思議なエピソードが関係しているのです。

今回は祇園花街の祈願所として知られる「濡髪大明神(ぬれがみだいみょうじん)」の話をしましょう。

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知恩院再興の折に建立された濡髪大明神

濡髪大明神の創建は詳細な記録がないため、はっきりとは分かっていませんが、知恩院が火災によって焼失し、その後、知恩院が再興された折に他のお堂とともに建立されたと言われています。

知恩院が失火によって焼失したのは江戸時代の初め、1633(寛永10)年の事です。ほとんどの伽藍が焼け落ち、焼けずに残ったのは三門と経蔵だけだったそうです。

その後、徳川3代将軍・家光公が知恩院の再建にあたり、雄誉霊巌(おうよ れいがん)上人を住職として迎い入れ、知恩院は8年の歳月をかけて、焼失前の倍の規模となって再興されました。

三門をくぐり、男坂と呼ばれる51段の急な石段を登り切ると、目の前に巨大なお堂が現れます。この建物は法然上人の御影(みえい)が祀られていることから、「御影堂(みえいどう)」と呼ばれています。

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現在は再建以来の大修理が行われており、修理が終わる平成30年度末まで、中に入ることができませんが、この御影堂が焼失後の再建間近の頃にひとつの逸話が生まれました。

雨の日に現れた狐の化身

ある雨の降る日、32世・雄誉霊巌上人はお堂に民衆を集めて説法を行っていました。その時、ふとお堂の外に目を向けると、傘も持たずに雨でずぶ濡れになって佇んでいる幼い男の子の姿が見えました。気になった上人は、説法を中断して、男の子のもとに近づくと、男の子はシクシクと泣きだしたのです。

「どうしたのだ? 傘も差さずにずぶ濡れになって…。迷子にでもなったのか?」と上人が男の子に聞くと、男の子は涙を流しながら話し始めました。

「実は私は、ここにあった穴蔵を住み処にしていた白狐(びゃっこ)だ。ところが、お堂が建てられることになって穴蔵が壊され、住む場所がなくなってしまった。殺生なことをするものだと腹が立ったので、住職に仕返しをしてやろうと思い、子どもに化けてここにやって来たのだが、住職の説法を聴いているうちに、自分がなんて愚かなことをしようとしていたことかと気づいた…」

上人は涙ながらに話す男の子(白狐)を憐れみ、1本の傘を貸し与えると、男の子は山へ消えゆくように去って行きました。

その後、上人は住み処を失った白狐のために勢至堂の裏山に祠を建て、守護神として白狐を祀り、白狐が化けた男の子の髪が雨で濡れていたことから、その祠は“濡髪祠”と呼ばれるようになりました。これが濡髪大明神の始まりです。

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知恩院の七不思議のひとつ

それから暫くして、上人のもとに借りた傘を返しに再び白狐が現れました。そして住み処を作ってもらったお礼として、白狐はその傘に神通力で知恩院を火から守る念を込めたと言われています。

この時、白狐が返したとされる傘は、今も御影堂の正面の軒裏に置かれています。

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この傘は「忘れ傘」と呼ばれ、“知恩院の七不思議”のひとつに数えられていますが、実はこの傘は、江戸時代初期の名工、彫刻職人の左 甚五郎(ひだり じんごろう)が知恩院の魔除け(火除け)として置いていったものだという説もあります。(知恩院の七不思議については「京の七不思議 その1『知恩院の七不思議』」もご覧下さい。)

どちらの説にしても、火災から守るという意味で、水(雨)に関連深い“傘”が残されているというのは面白いことですね。

縁結びの隠れたスポット

結局、濡髪大明神の由来には、“濡髪”に些か期待していたのですが、艶っぽい話はどこにもなく、ちょっと、残念なのですが、その“濡髪”という艶っぽい響きから、地元では縁結びの隠れたスポットとされています。祇園が近いこともあって、舞妓さんたちが縁結びの祈願に訪れるそうです。白狐も美しく、可愛い舞妓さんがお参りに来てくれて、さぞかし嬉しいことでしょうね。

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濡髪大明神:京都市東山区林下町400  知恩院内 TEL : 075-531-2111(知恩院)

(写真・画像等の無断使用は禁じます。)

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