御室桜 ~仁和寺に咲き誇る気高い花

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満開の花が美しい桜。京都には多くの桜の名所がありますが、どこの桜も、それぞれの趣と美しさが観る者の目を楽しませてくれます。その中でも『京の桜は東の清水(きよみず)、西の御室(おむろ)』と言われ、洛東の清水寺と洛西の仁和寺(にんなじ)は京都を代表する桜の名所として知られていますが、その仁和寺には遅咲きで知られる「御室桜(おむろざくら)」と呼ばれる桜があります。今回は春最後のお花見として訪れる人を楽しませてくれる「御室桜」の話をしましょう。

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門跡寺院としての誇りと風格のあるお寺

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世界文化遺産にも登録されている真言宗御室派の総本山・仁和寺は、886(仁和2)年に第58代光孝天皇(こうこうてんのう)の勅願によって造営が始まりました。しかし、翌年、光孝天皇は崩御され、その息子(第七皇子)の第59代宇多天皇が先帝の遺志を受け継いで、888(仁和4)年に落成しました。

仁和寺は創建当時から明治時代に至るまで、代々の法親王(ほっしんのう)を迎え入れた門跡寺院です。創建されたときの元号である“仁和”をそのまま寺名に使われていることは、格式の高さを示しています。

広大な境内に建ち並ぶ御所風建築物の数々

京都で“御室(おむろ)”と言えば、仁和寺のことですが、その“御室”には、天皇や皇族が住む所という意味があり、宇多天皇が出家して仁和寺に入ったことから、“御室御所”とも呼ばれています。

仁和寺を訪れると、まず最初に総本山に相応しい、堂々とした風格ある二王門が出迎えてくれます。この二王門は徳川3代将軍・家光が寄進したもので、知恩院、南禅寺の三門とともに「京都三大門」のひとつに数えられています。

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その二王門をくぐると、そこには広大な仁和寺の境内が広がっています。

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仁和寺の境内は「寺院伽藍」と「御殿」の2つのエリアに分かれています。仁王門の右手とその奥の「寺院伽藍」エリアには、国宝の「金堂」や重要文化財の「御影堂」、「観音堂」、「五重塔」などが、そして、左手手前の「御殿」エリアには有形文化財の「書院」や「宸殿」、重要文化財の「遼廓亭(りょうかくてい:茶室)」や「飛濤亭(ひとうてい:茶室)などがあり、どの建造物も、皇族や貴族とのゆかりが深かったことを物語る、由緒正しい御所風建築様式の建物です。

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貝原益軒も絶賛した御室桜

「御殿」エリアの先(中門をくぐった左手)に、御室桜(おむろざくら)の園が広がっています。仁和寺と言えば「桜」と言われるほど古くから人気があって、例えば、江戸時代の本草学者であり、儒学者でもある貝原益軒(かいばらえきけん)は、著書の「京城勝覧(けいじょうしょうらん:今で言えば京都の観光ガイドブック)」に『春は此御境内の奥に八重桜多し。洛中洛外にて第一とす』と記し、仁和寺の八重桜は京都で一番だと絶賛しています。

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現在の御室桜は八重ではない!?

ところが、ここに意外な事実が…。八重桜で知られる御室桜ですが、現在、210本ほどある木々のうち、実際はその9割以上は八重ではなく一重であることが、昨年(2014)の調査で判明したのです。それならば、貝原益軒が絶賛した御室桜は八重ではなかったのかというと、そうではなく、当時の御室桜は八重だったことに間違いはないようです。昭和初期に書かれた御室桜に関する研究書にも、八重桜が多数を占めるという記述が残っています。では、どうして、現在の御室桜はそのほとんどが八重ではなく一重なのでしょうか?

御室桜は品種改良によって生まれた「御室有明」という桜で、その樹齢は360年以上と推定されています。その長い年月の中で、「ひこばえ」と呼ばれる木の根元から伸びる若芽が枝になり、やがて枯れてはまた別の枝が伸びるといった世代交代を幾度も繰り返されてきました。そういった特有の生命サイクルによって、品種改良で作られた八重の性質が徐々に失われ、桜本来の一重に戻るという突然変異が起きたのではないかと考えられています。

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「彼女、御室の桜やな」

御室桜の最大の特徴は、樹高が低いことです。大体、2メートルぐらいの高さでしょうか。ソメイヨシノのように見上げることなく、普通に立った目線の高さに、匂い立つような桜の花々を間近で楽しむことができます。

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また、御室桜が花を低い位置につけることから、京都では人の鼻をこの花にたとえて、「彼女、御室の桜やなぁ」という言い方をすることがあります。これはお分かりの通り、“花”と“鼻”を掛けて、鼻が低いということを遠回しに表現している言葉ですが、人から言われれば「なんて失礼な!」と、険悪な空気が漂いそうですよね。でも、悪い意味ではないのです。

 ♪わたしゃお多福 御室の桜 花(鼻)がひくぅーても 人が好く~

これは、京のわらべ歌にある一節ですが、「御室の桜やなぁ」には、この歌にあるように、たとえ鼻が低くとも、白くて気高い御室桜のような清廉さがあって、それが人に愛されるのだという意味があるのです。ですから、もし、「御室の桜やなぁ」と言われても、決して目を吊り上げて、怒らないようにしましょうね。それは「かわいおす(可愛い)」ということなのですから…。

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遅咲きの桜、「御室桜」。ノーベル文学賞を受賞した川端康成の『古都』に「御室の桜を見たら、春の義理がすんだ」という一文があります。御室桜の花見の頃が終われば、京は新緑の季節へと移り始めます。

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仁和寺:京都市右京区御室大内33 TEL : 075-461-1155

(写真・画像等の無断使用は禁じます。)

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