大田垣蓮月 ~苦難の人生を生き抜いた女流歌人

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五山の送り火のひとつ、“船形”が点される西賀茂・舟山(妙見山)にある神光院(じんこういん)。この寺院は“西賀茂の弘法さん”と呼ばれ、東寺、仁和寺と並ぶ「京都三大弘法」のひとつです。また、弘法大師(空海)が42歳の夏に90日間の修行をした、つまり、大厄を払われたことでも知られる寺院です。

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この神光院の山門を入ってすぐ左手に「蓮月尼(れんげつに)」と刻まれた石碑があり、さらにその奥に「蓮月庵(れんげつあん)」と呼ばれる小さな茶室がひっそりと建っています。今回は、蓮月尼こと、「大田垣蓮月(おおたがき れんげつ)」の話をしましょう。

日本の歴史のターニングポイントになった蓮月の和歌

蓮月を知る人は少ないかもしれませんが、江戸末期の京都の女流歌人で、越後の“貞心尼(ていしんに)”、加賀の“千代女(ちよじょ)”に並ぶ「三大女流歌人」のひとりです。また、陶芸家でもありました。

明治戊辰の役の折り、官軍が京から江戸に向けて出陣したときに、三条大橋の群衆の中にいた蓮月は、官軍を先導していた西郷隆盛に和歌を書いた短冊を手渡しました。

“あだみかた 勝つも負くるも哀れなり 同じ御国の人と思へば”

この和歌に感銘した隆盛は、のちの江戸城の無血開城を心に決めて、勝海舟と会談したと言われています。これは、蓮月の一首が日本の歴史のターニングポイントになったとも言えるエピソードで、今も多くの人が蓮月に共感を覚えるのは、そんな蓮月の心意気にあるのかもしれませんね。

蓮月の非凡な才能は世に知れ渡り、詠んだ和歌は庶民から愛されましたが、蓮月の前半生は不遇の連続だったと言われています。

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人の世の悲しみと無情を味わい抜いた半生

蓮月は京都の花街・三本木(現:河原町通丸太町東入ル)で生まれ、生後すぐに知恩院の寺侍であった大田垣光古(おおたがき てるひさ)の養女になります。8歳の頃から丹波亀山城で御殿奉公を勤め、16歳で結婚。3人の子どもを授かりましたが、3人とも生後すぐに亡くなり、夫とも離婚することとなりました。

その後、28歳で再婚し、今度は2人の子どもを授かりますが、4年後に夫が病死し、翌年、33歳で出家。そして、蓮月が42歳までに2人の我が子と養父の光古を亡くしました。このように不遇が続く蓮月の思いは如何なるものであったのでしょうか…。蓮月のここまでの人生は、人の世の悲しみと無情を味わい抜いた人生だったに違いありません。

大ヒットした蓮月の焼き物

しかし、蓮月はそれからも生き続け、歌人として多くの和歌を世に送りました。また、豊かな発想と柔軟な思考を持ち合わせた蓮月は、手ひねりの陶器に自作の和歌を彫るという「蓮月焼き」を生み出し、その何とも艶っぽい作風が評判になり、京の町の人たちに人気を博したと言われています。その人気ぶりは、贋作が多く出回るほどで、京に行って、蓮月焼きを買って帰らなければ、何のために行ったかわからないと言われるほどだったそうです。

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ところが、蓮月焼きが好評なのは良かったのですが、注文がひっきりなしに入り、来訪者も多くなって、それに煩わしさを感じた蓮月は、それから逃げるために引っ越しを繰り返したそうです。多い年は1年で13回も引っ越したとか。そのために蓮月には「屋越し蓮月」の異名がありました。

そして、最終的に落ち着いた先が神光院にある蓮月庵だったのです。それは蓮月が75歳の時のことで、それから85歳で亡くなるまでの10年間、その小さな茶室で過ごしました。静寂に満ちた蓮月庵は蓮月にとって心安まる場所だったのでしょうね。その気持ちを表した歌が神光院にある歌碑に残されています。

“やどかさぬ人のつらさをなさけにて  おぼろ月夜の花の下ふし”

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産みの喜びを生きる力に変えた!

尊い命を相次いで失った蓮月は、歌や陶器を作り出すという産みの喜びを生きる力に変えて、苦難の人生を生き抜いたのです。

“願わくはのちの蓮の花の上に  くもらぬ月をみるよしもがな”(蓮月 辞世の句)

ひっそりと佇む蓮月庵には、苦しみを乗り越えて生き続けた蓮月を偲んで、今も多くの人が訪れています。

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神光院:京都市北区西賀茂神光院町120 TEL : 075-491-4375

(写真・画像等の無断使用は禁じます。)

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