泉涌寺 ~アルカイックスマイルの美女に会える静寂のお寺

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Evernoteに保存Evernoteに保存

東山三十六峰のひとつ、月輪山(つきのわさん)の麓にある泉涌寺(せんにゅうじ)。一般的に寺院は平地、もしくは小高い場所に建てられるのが普通ですが、この泉涌寺は三方を丘陵で囲まれた場所に建てられていて、入り口の大門から仏殿に続く参道は、緩やかな下り坂になっています。このような地形に建つ寺院は珍しく、日本全国に於いても比叡山・延暦寺とここ泉涌寺だけだそうです。今回は、静寂な森に囲まれた「泉涌寺」の話をしましょう。

sennyuuji 01

スポンサーリンク
レクタングル(大)広告

「泉涌寺」という寺名の由来は?

真言宗泉涌寺派の総本山・泉涌寺は、824~834(天長年間)年に、弘法大師(空海)がこの地に草庵を結んだことに始まります。

sennyuuji 06

その草庵は当初「法輪寺」と名付けられ、後に「仙遊寺(せんゆうじ)」と改名されました。そして、順徳天皇の時代、1218(健保6)年に武将・宇都宮信房(うつのみや のぶふさ)から、この聖地の寄進を受けた月輪大師(がちりんだいし)が宋の法式を取り入れた大伽藍を造営していた時に、境内の一角から清水が湧き(涌き)出たことから、寺名が「泉涌寺」と改められたのです。その由来となった泉は今も枯れることなくコンコンと湧き続けています。

また泉涌寺は、古くから天皇家に信仰されていて、鎌倉時代の四条天皇から江戸時代の孝明天皇までの歴代の御陵が39陵もあり、皇室との関係が深いことから「御寺(みてら)」とも呼ばれています。泉涌寺は日本で唯一の皇室の菩提寺でもあるのです。

人々の三世を守護する御本尊

重要文化財に指定されている大門をくぐり、下り参道を進んだところに、どっしりとした構えの「仏殿」(重要文化財)があります。密教寺院では、一般的に「本堂」とか「金堂」と言うのが普通なので、「仏殿」という言い方をされているのは珍しいことです。

sennyuuji 07

sennyuuji 04

仏殿には泉涌寺のご本尊である三世三尊仏(さんぜさんぞんぶつ)と開山された月輪大師像が祀られています。三世三尊仏とは、現在を表す“阿弥陀如来”(左)、過去を表す“釈迦如来”(中央)、未来を表す“弥勒如来”(右)の三体の仏で、三世にわたって人々を守護しているのだそうです。

sennyuuji 05

350年振りの本格的修復

少し余談になりますが、この三世三尊仏は仏殿の天井を飾る『蟠龍図(ばんりゅうず)』と共に、2008(平成20)年から2014(平成26)年の夏まで本格的な修復が行われ、2014年11月1日に修復完成の法要が行われました。寺伝に残る本格的な修復は江戸期の1661~1673年の寛文年間以来のことで、それが正しければ、今回の修復は実に約350年振りに行われたことになります。

sennyuuji 02

三世三尊仏は鎌倉時代の仏師・運慶の作と言われ、蟠龍図は江戸時代初期の狩野派の絵師・狩野探幽の作とされていますが、蟠龍図に関しては、この修復で龍の顔付近にある墨の飛沫の特徴などから、改めて探幽筆であることが確認されたそうです。

心を惹き付ける美しき観音菩薩像

泉涌寺は女性にも人気のある寺院ですが、その理由のひとつは、日本一美しい観音像と言われている『楊貴妃観音像(ようきひかんのんぞう)』です。

sennyuuji 08

楊貴妃は中国の唐の時代の皇帝、玄宗皇帝の妃で、世界三大美女(クレオパトラ、楊貴妃、ヘレネの3人。因みに日本で言う三大美女はクレオパトラ、楊貴妃、小野小町)の1人としてよく知られています。楊貴妃のその美貌から、玄宗皇帝は政治を顧みなくなり、国は混乱し、国難を招いた元凶は楊貴妃だとされて、玄宗皇帝はやむなく楊貴妃に自ら命を絶つことを命じたと言われています。美しいが故に悲運な最期を遂げた楊貴妃ですが、玄宗皇帝は亡き楊貴妃を偲んで等身坐像にかたどり、聖観音菩薩像として彫られたのが『楊貴妃観音像』です。

そして、1255(建長7)年に月輪大師の弟子の湛海(たんかい)が中国に渡った際、湛海がその楊貴妃観音像を持ち帰り、泉涌寺に安置しました。どうして、湛海が像を持ち帰ることになったのか、その経緯はよくわからず、もしかすると良からぬ手段で…、と考えられなくもないのですが、そのお陰で日本一美しいと言われる観音像に京都で会うことができるわけです。

やや俯き加減で口の両端を軽く上げ、優しげなアルカイックスマイルをたたえた日本の仏像にはないエキゾチックな顔立ちの『楊貴妃観音像』。この楊貴妃像を見ることができるのは国内では泉涌寺だけで、色彩が多く、豪華な宝冠などを身に付けた姿には、太秦にある広隆寺の簡素な姿の弥勒菩薩に相対する美しさがあり、そこに人は惹き付けられるのでしょう。

sennyuuji 09

『楊貴妃観音像』は大門をくぐったすぐ左手にある「楊貴妃観音堂」に安置されています。以前は秘仏とされていて、100年に1度しか開帳されなかったとのことですが、現在はいつでも拝観できることからか、絶世の美女と言われる楊貴妃にあやかろうと、美人祈願に、そして、縁結びのご利益を授かりに、女性の参拝者が絶えず訪れています。

sennyuuji 10

自然に囲まれた静寂の寺院

広い山内にある泉涌寺は、都会の喧噪とはまったく無縁で、聞こえてくる音は、風に吹かれる草木が擦れる音と、鳥たちの鳴き声だけです。泉涌寺を訪れると不思議と身も心も美しくなるような気がします。夏の盛りが過ぎた頃から紅葉の秋にかけて、ゆっくりと訪れてみては如何でしょうか。

sennyuuji 03

泉涌寺:京都市東山区泉涌寺山内町27 TEL : 075-651-1551

(写真・画像等の無断使用は禁じます。)

スポンサーリンク
レクタングル(大)広告
レクタングル(大)広告
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Evernoteに保存Evernoteに保存

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA