宗旦狐 ~相国寺の藪の中に住む白ギツネの話

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稲荷大明神(いなりだいみょうじん)の使いとして信仰されているキツネは、昔から人を化かすなどと言われて、イタズラ好きの動物とされています。京都にはそのキツネにまつわる伝説がいろいろと残されていますが、今回はその中のひとつ、相国寺(しょうこくじ)に伝わる白ギツネの話をしましょう。

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白ギツネを祀ったお稲荷さん

同志社大学・今出川キャンパスの北にある、京都五山のひとつ、禅寺の「相国寺(しょうこくじ)」。その相国寺の広大な境内の一隅に「宗旦稲荷(そうたんいなり)」というお稲荷さんがひっそりと佇んでいます。

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この宗旦稲荷には、茶人で有名な千利休の孫にあたる宗旦の姿に化けて、人々の前に現れたとされる白ギツネ、“宗旦狐(そうたんきつね)”が祀られていますが、この“宗旦狐”に数々の逸話があるのです。

ニセ宗旦の正体は?

千利休の孫の宗旦は、利休の侘び茶(わびちゃ)を推進し、千家を再興した茶人です。

ある日のことです。相国寺で開かれた茶会が終わり、控えの間に集まった宗旦の弟子や客の茶人たちは、今、終わったばかりの宗旦の見事なお手前を褒め称える談議をしていました。

そんなときに、どうしたことか、控えの間にふらりと宗旦が現れたのです。「みなさん、遅れまして…。さぁ、どうぞお茶室の方へ…。」 その言葉を耳にした弟子や茶人たちは、「エッ!今さっき、宗匠(そうしょう:茶道や華道の師匠のこと)のお茶を頂いたところなのに…。」といぶかり、「もう一度ですか?」と宗匠に尋ねると、「もう一度? いやいや、私は今、着いたばかりで…。」 

取り敢えず、茶会は再び、開かれることになりました。そして、宗旦のお手前は先程よりも素晴らしいものでした。でも、弟子や茶人たちは皆、どこか様子が変だと宗旦のお手前を眺めながら思っていたのです。

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その後も、宗旦が開くお茶会には同じようなことが、度々起こりました。「もしかすると、宗匠はふたりいるのでは?」そう思った弟子たちは、宗旦を茶会に招き、その間に、宗旦の自宅に宗旦がいるかどうかを確かめることにしたのです。

そして、その茶会の日。宗旦は時間通り、茶会にやって来ました。それを確認した上で弟子のひとりが急いで、宗旦の自宅に行くと、宗旦はまだ自宅にいるではありませんか! もはや、これで疑いの余地はありません。弟子たちは茶会の席にいるニセ宗旦を囲んで「お前は何者だ!?」と詰問しました。するとニセ宗旦は慌てる様子もなく、淡々と話し始めたのです。

「いやいや、バレてしまいましたね。申し訳ない。実は私は、この相国寺に昔から住んでいる白ギツネでございます。いつも、宗匠のお手前を見ておりましたが、そのあまりの美しさについ、自分でもやってみたいと思うようになったのです。そこで、宗匠に化けて…、後は皆さんのご存知の通りでございます。どうか、お許しを…。」

このように白ギツネは素直に謝罪し、また、本物の宗旦に劣らぬ見事な茶の腕を見せたことから、白ギツネは許されることになりました。そして、宗旦に化けたことから、この白ギツネのことを「宗旦狐(そうたんぎつね)」と呼ぶようになったのです。

人々に愛された宗旦狐

それから後も、宗旦狐は宗旦の姿に化けて、相国寺の雲水たちと一緒に托鉢をして回ったとか、近くのお寺の和尚さんと碁を打ったとか、門前のお店が破産しかけたときは神通力で助けたなど、宗旦狐は人々と関わりを持つ中で、次第に慕われるようになっていったのです。

宗旦狐の哀しい最期

そのように愛すべきキャラとなった宗旦狐ですが、門前にある「子字屋(ちょうじや)」というお豆腐屋さんに伝わる宗旦狐の最期は少し哀れです。

ある日のこと、油揚げを作っていた鍋の中に、突然、天井からネズミが落ちてきました。油に揚げられて死んでしまったネズミは店の外に捨てられたのですが、その油の匂いに誘われたのか、宗旦狐は死んだネズミを食べてしまったのです。すると、その途端、神通力が効かなくなり、狐の正体に気づいた犬に追いかけられる羽目になってしまいました。宗旦狐は必死に逃げ回り、からくも、ねぐらにしている相国寺の藪の中に飛び込んだものの、誤って古井戸に落ちて死んでしまったのです。

そんな宗旦狐の最期を哀れに思った相国寺の雲水たちが、その供養のためにと建てた祠が、今も伝わる宗旦稲荷です。

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人を化かしたいたずら者とはいえ、多くの人たちから愛された宗旦狐。宗旦稲荷で手を合わせていると、境内の藪からひょっこりと顔をだすかもしれませんよ。

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相国寺:京都市上京区今出川通烏丸東入相国寺門前町701 TEL : 075-231-0301

(写真・画像等の無断使用は禁じます。)

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