正伝寺の月見 ~動く日本画の世界

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月を愛でる行事、「中秋の名月」。月見団子を食べながら、夜空に浮かぶ月を観賞し、その時をゆったりと過ごす…。月見は何とも風流な日本独特の伝統行事です。

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京都には、大覚寺、高台寺、神泉苑、渡月橋など「中秋の名月」にふさわしい名所がたくさんありますが、秋の冴えた空気と静寂の中で、一枚の絵を鑑賞するかのようなお月見を楽しみたい方に是非、お薦めしたい名所があります。それは京都市の北に位置する西賀茂の古刹、正伝寺(しょうでんじ)。今回は、知る人ぞ知る月見の名所、「正伝寺」の話をしましょう。

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山寺の風情漂うお寺

京都の夏の風物詩のひとつ、「五山の送り火」。その五山のひとつ、船山の中腹に「正伝寺」はあります。人里離れたところにあるためか、手つかずの自然が残り、シカやイノシシ、タヌキにキツネといった野生動物の姿も見かける、山寺の風情漂うお寺です。

一番の見どころ、遠州作・枯山水庭園

この正伝寺には見どころがいろいろありますが、一番の見どころは、方丈の東に面した小堀遠州作の枯山水庭園です。禅宗寺院の枯山水様式の庭園は、石と砂で構成されるのが一般的ですが、この正伝寺の庭園は石ではなく、丸く刈り込まれた植栽と砂で構成された、めずらしい庭園なのです。

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庭一面に白砂を敷き詰められ、そこに大小の植栽が、向かって右手から、七つ、五つ、三つと、いわゆる七五三の句調で配置されています。その植栽の間を、獅子の親子が渡っているかのように見えることから、この庭は「獅子の児渡しの庭(ししのこわたしのにわ)」と呼ばれています。

そう言えば、超有名な龍安寺の石庭も七五三の庭で、そちらは「虎の子渡しの庭」と呼ばれています。“獅子の子”と“虎の子”の違いはありますが、庭の持つ意味合いは同じなのかもしれませんね。ただ、石と植栽においては、見る者に与える印象は大きく異なります。それは石は荒々しく、力強い印象を与えるのに対して、植栽は優しく、柔らかい印象を与え、見るものの気持ちを和ましてくれます。

庭園の遠く向こうには比叡山の山並みが連なり、その比叡の山々を借景に取り入れた正伝寺の庭園は、いっそう、味わい深いものになり、禅寺ならではの侘びと寂びを感じさせてくれる、まさに一級品の庭園なのです。そんな庭園が、1年で一番、月が美しく見える秋の頃、夕闇が迫り、月が昇り始めると、その静なる庭は、一転、動く日本画に変わるのです。

幻想的な日本画の世界

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虫の声だけが聞こえる静けさの中、日が沈んだ後の東の空は次第に薄墨色へと移り、シルエットになったなだらかな比叡の稜線の遙か上に、白く輝く月が姿を現します。そして、その月明かりに映える、遠州の庭園美…。ゆっくりと過ぎゆく時間とともに、月は動き、それに伴って、庭の植栽に当たる月の光と影も動く。それはまさに動く日本画の世界です。庭園と月が織りなす絶妙のバランスは見る者に至福の時を与えてくれるでしょう。

月を愛でる日本人の感性

作家・夏目漱石は「I LOVE YOU」を「月が綺麗ですね」と訳したそうです。もちろん、わざとそう訳したわけですが、その理由は、日本人は愛しているなんて言葉にしなくても、それだけで、想いは相手に充分に伝わるからだとか。日本人は遠い昔から月に対して特別な想いを持っていました。移ろう景色を愛でる日本人の感性って、ホント、素敵ですよね。

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正伝寺は毎年、中秋の名月の日の前後3日間は、夜間拝観が行われます。今年、2015年の中秋の名月は9月27日ですので、是非、日頃の疲れを癒やしてくれる、幻想的なお月見を体感してみてください。

正伝寺:京都市北区西賀茂北鎮守菴町72 TEL : 075-491-3259

(写真・画像等の無断使用は禁じます。)

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