京都怪異譚 その15『土蜘蛛 ~世にも不気味な化け物』

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石にまつわる「土蜘蛛伝説」

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京都市上京区にある、北野天満宮。その二の鳥居の西側にある東向観音寺(ひがしむかいかんのんじ)の境内の一角に、柵に囲われた小さな祠があります。

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その中には、石灯籠の火袋(火を灯すところ)とされる苔むした石が収められていますが、この石が、世にも不気味な妖怪「土蜘蛛(つちぐも)」の伝説にまつわる石なのです。

土蜘蛛と聞いてもピンと来ないかもしれませんが、能や狂言などの古典芸能で、蜘蛛の糸をパッと広げる演目と言えば、「あー、あれのこと!」とお分かりになるのではないでしょうか。今でこそ、土蜘蛛という妖怪を知る人は妖怪オタクだけかもしれませんが、江戸時代の頃は、女、子どもでも知っていると言われるほどにポピュラーな妖怪で、今で言えば、AKBやEXILEのように誰もが知る人気者だったようです。

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源頼光を苦しめた土蜘蛛の話

この土蜘蛛を題材にした話はいくつもあるのですが、その中でも『平家物語』や能の演目『土蜘蛛』などに描かれている、平安時代中期の武将、源頼光(みなもとのよりみつ)を苦しめたエピソードがよく知られています。そして、特に有名なのは『平家物語』に書かれている話です。

源家の武将、頼光は原因不明の病に冒され、高熱を出して病床に伏せっていました。名医に診せても、原因はわからず、あらゆる薬もまったく効果なし。挙げ句には、水ごりをして祈祷まで行いましたが、いっこうに熱は下がらず、ますます体は弱っていくばかりでした。

ある冬の夜のことです。頼光が熱にうなされ、意識も朦朧としているところに、突然、怪しげな法師が現れました。その法師は、苦しんでいる頼光の顔をのぞき込み、血で真っ赤になった口を大きく開けて、「苦しめー!もっと苦しむんじゃー!」と叫び、荒縄で頼光を縛ろうとしました。頼光は重い体を必死に動かし、枕元に置いてあった名刀「膝丸(ひざまる)」を抜き、法師を切り付けたその瞬間、法師の姿は忽然と消えてしまいました。ただ、畳の上には真っ赤な血が点々と落ちていたのでした。

夜が明けるとすぐに、頼光は家来の四天王(日本史上最強の鬼と言われた大江山の酒呑童子を退治した渡辺綱〔わたなべのつな〕、坂田金時〔さかたのきんとき〕、卜部季武〔うらべのすえたけ〕、碓井貞光(うすいのさだみつ)の4武将)を呼び出し、奇っ怪な法師を探すように命じました。

四天王が頼光の屋敷から北西の方角に点々と地面に落ちている血をたどっていくと、血は大きな石のところで途絶えていました。そこで、その石を動かしてみると、突如、蜘蛛の化け物が現れて、糸を吹きかけながら襲い掛かってきたのです。ところが、さすがに四天王、激闘の挙げ句、見事に蜘蛛の化け物を退治したのでした。その後、頼光の病は治り、名刀「膝丸」は「蜘蛛切り」と呼ばれるようになったと言われています。

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土蜘蛛が逃げ込んだ巨石は実在した!

土蜘蛛が逃げ込んだ大きな石は、頼光の屋敷があったとされる堀川一条から西に約1キロほど離れた清和院(せいわいん)というお寺の西側にあったとされており、江戸中期に書かれた絵図には「蜘蛛塚」として巨大な石が描かれています。ということは、その時代までは土蜘蛛が逃げ込んだとされる石は存在していたということです。

ところが、「蜘蛛塚」は明治時代に行われた地域開発のために取り壊されてしまい、その時に石も無くなってしまったそうなのです。ただ、「蜘蛛塚」を取り壊した際に、塚の下から石灯籠も一緒に掘り起こされ、その石灯籠の火袋の部分の石が、東向観音寺の祠の中にある石なのです。

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鎮まることのない土蜘蛛の呪い

この石にも土蜘蛛の霊力が乗り移っているのか、掘り起こされた後に、石を持ち帰った人の家の家業が傾き、家を売却。そして、その石をもらい受けた人も家が潰れるという不孝な出来事が続いたため、これは土蜘蛛の呪いに違いないとして、東向観音寺に移されたのだそうです。

能や狂言で「土蜘蛛」を演じると、不思議と雨が降ることが多いようです。これも土蜘蛛の呪いなのかもしれませんね。

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東向観音寺:京都市上京区今小路通御前通西入上ル観音寺門前町863 TEL : 075-461-1527

(写真・画像等の無断使用は禁じます。)

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