京の七不思議 その5『八坂神社の七不思議』

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不思議に彩られた八坂の祇園さん

雅な華やかさが京都らしさを醸し出す、色鮮やかな朱色の大門。この大門のある神社が八坂神社(やさかじんじゃ)です。

明治初期に八坂神社と改称されましたが、それまでは「祇園社」や「祇園感神院(ぎおんかんじんいん)」という名称だったため、京都では今もその名残から、「祇園さん」と親しみを込めて呼ばれています。

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八坂神社はもともと疫病退散を願う庶民の信仰から、広く崇拝されるようになり、今では日本各地に約3,000もの分社を持つ、京都を代表する神社のひとつです。

“素戔嗚尊(すさのおのみこと)”、“櫛稲田姫命(くしいなだひめのみこと)”、“八柱御子神(やつはしらのみこがみ)”の三神を祭神とする八坂神社の歴史は古く、その由来は、平安京遷都の約150年前、656(斉明天皇2)年にさかのぼります。その長い歴史の中で、数々の不思議に彩られた逸話が生まれました。そして、それらは七不思議として、今に伝えられています。今回は平安の世から京を見守り続けてきた八坂神社の「七不思議」の話をしましょう。

八坂神社の七不思議とは!?

八坂神社の七不思議:その1「西楼門(にしろうもん)」

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京都の東西のメインストリート、四条通の東の突き当たりにある朱色の大門が「西楼門」です。その形が籠(かご)のようであることから、古くは“籠門(かごもん)”と呼ばれていました。

左右に山廊(さんろう)を持つ、その優美な姿と、20段ほどの石段の上に堂々と建っていることから、この西楼門を八坂神社の正門と思われることがよくあるようですが、西楼門は正門ではありません。本殿の南にある「南楼門」が正門なのです。でも、石段の下に立って西楼門の姿を仰ぎ見れば、その立派さと京都らしい雰囲気から、正門だと思うのも無理はないかもしれませんね。

この西楼門が、八坂神社の七不思議のひとつにとして数えられているわけですが、その理由はこの楼門には、蜘蛛の巣が張ったことが今までに一度もないと言われているためです。そして、屋根から雨垂れがしないために、石段には雨垂れの跡が一切ないとも言われています。確かにそれは不思議なことですね。でも、この言い伝えを聞くと、“どうしてそうなるのか”、そして、“それを確かめた人は今までにいるのか”ということが、妙に気になってしまうのですが…。

八坂神社の七不思議:その2「力水(ちからみず)」

八坂神社の境内には14の摂社末社がありますが、その内のひとつに伊勢神宮の天照大御神(内宮)と豊受大神(外宮)を御祭神としてお祀りした末社の大神宮社(だいじんぐうしゃ)があります。その社の入り口の右側に「祇園神水(ぎおんしんすい)」とも呼ばれる水が湧き出ていますが、これが「力水」と呼ばれている湧き水です。この力水を飲んで、境内にある美御前社(うつくしごぜんしゃ)にお参りすると、美人になるとか…。

美御前社はその名称から想像がつく通り、美しくなるというご利益があるそうで、女性にはありがたい神社なのです。一般の女性はもとより、祇園の芸妓さんや舞妓さん、そして、美容・理容の関係者や化粧品業者の方など、美を求める人たちが多く参拝に訪れています。中には美しくなりたいという男性も…。

八坂神社の七不思議:その3「二見岩(ふたみいわ)」

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大神宮社には、もうひとつ、不思議があります。社内に内宮と外宮が向き合うように建っていますが、その間の地面に「二見岩(ふたみいわ)」と呼ばれる岩があります。

伊勢の二見という場所に有名な「夫婦岩」がありますが、この大神宮社が内宮と外宮を祀っていることから、夫婦岩のある地名を取って、“二見岩”と名付けられたのではないかと思うのですが、伊勢の大きな夫婦岩とは違って、八坂神社の二見岩は注意しないと気がつかないほどの小さな岩です。ところが、この二見岩は、地面に出ている部分はわずかで、地中では地軸に達するほど深く伸びていると言われているのです。それには、どんな意味があるのでしょう…。不思議なことです。

八坂神社の七不思議:その4「夜啼石(よなきいし)」

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境内の北東角にある末社の日吉社(ひよししゃ)には、京都の鬼門(北東)を守る方位除けの神様が祀られていますが、その日吉社の右前にある古木の根元に「夜啼石(よなきいし)」と呼ばれる大きな石があります。

一見して何の変哲もない、平凡な石ですが、その名前の通り、夜になるとシクシクとすすり泣くと言われています。一体、どんな風に啼くのでしょう…。夜な夜な、暗闇から聞こえてくる人の泣き声。「何だ?」と、声のする方に近づいてみると、そこには人の姿はなく、あるのはひとつの大きな石。その石から悲しげにすすり泣く声が…。これはちょっとしたホラーですね。

八坂神社の七不思議:その5「龍穴(りゅうけつ)」

5つ目の不思議は、八坂神社の本殿にあります。でも、その不思議は今は誰も見ることができません。と言うのは、その不思議は本殿の建物の下に隠されているからです。

言い伝えによると、本殿の下には、龍穴(りゅうけつ)と呼ばれる底知れぬ深い井戸があると言われています。この井戸には龍が棲んでいると言われ、鎌倉時代に書かれた「釈日本紀(しゃくにほんぎ)」には竜宮に通じているとあります。また、一説には八坂神社から西に位置する神泉苑(しんせんえん)や東寺(とうじ)にも繋がっているとも言われています。

古来より、大地のエネルギーとされる「気」を龍に見立て、その「気」が集結するところが、龍の棲む場所、龍穴とされてきました。八坂神社は青々とした水をたたえた深い池の上に建てられたという言い伝えがあるので、もしかすると龍穴は本当にあるのかもしれませんね。

八坂神社の七不思議:その6「龍吼(りゅうぼえ)」

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6つ目の不思議も本殿にあります。本殿に参拝された後、本殿の東の柱(本殿に向かって右の柱)の下で西を向いて、強く柏手を「パン!」と1回、打ってみてください。すると「パィ~ン」と大きく反響して聞こえます。他の場所で柏手を打っても、「パン!」と聞こえるだけで、音は反響しません。どうして、その場所だけ柏手の音が反響するのか、今もその原因はわからないようですが、実は東の柱には奇妙なものがあり、それが反響に関係しているらしいのです。

東の柱の上の方に目を向けると、柱と屋根の庇(ひさし)の接点の部分に木彫りの龍の頭が東に向いてくっついているのがわかると思います。この龍の頭は「龍吼(りゅうぼえ)」と呼ばれていますが、反響音はその木彫りの龍が柏手に応えて鳴く龍の声だと言われているのです。この龍は柏手の音に喜んでいるのでしょうか…。

八坂神社の七不思議:その7「忠盛灯篭(ただもりとうろう)」

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本殿の東側にある末社の大神宮社と摂社の悪王寺社(おくおうじしゃ)の間に石灯籠があります。この灯籠は「忠盛灯篭(ただもりとうろう)」と呼ばれていますが、その由来が7つ目の不思議です。

平清盛の父、忠盛は白河上皇に仕える武士でした。五月雨が降って、見通しの悪い不気味な夜のことです。

白河上皇が寵愛する祇園女御(ぎおんのにょご=後の清盛の母)の許へ向かうため、八坂神社の境内を歩いていると、前方の暗闇に頭がキラキラと光り、右手に黒い塊を持ち、左手に光る物をもった、得体の知れぬ化け物が立っていました。上皇は、その化け物は鬼に違いないと思い、同行していた忠盛に化け物を斬り殺せと命じました。

ところが、忠盛はまずその化け物の正体を確かめるため、生け捕りにしようとその化け物を組み伏せると、その正体は神社の雑用をする年老いた僧侶だったのです。雨が降っていたので、濡れないように頭に藁の笠を被り、手に油壺と火入れを持って、灯篭に火を入れようとしている老僧の姿が、雨で見通しが悪かったせいもあって、あたかも鬼のように見えたのです。

忠盛の機転がなければ、老僧は斬り殺されていたわけです。上皇は忠盛のその冷静沈着な判断に感嘆し、褒め称えました。そういうことがあって、そのくだんに登場する灯篭を「忠盛灯篭」と呼ぶようになったと伝えられています。

不思議に満ちた神社

八坂神社の七不思議ということで、7つの不思議をお話ししましたが、実は、八坂神社の不思議は他にもあって、この7つの不思議以外にあと9つもあって、全部で16の不思議があると言われています。

一説によると、近くにある七不思議でも知られる知恩院に対抗して、八坂神社でも七不思議に相応しい話を探してみたら、あれよこれよと不思議な話が出てきて、結局、「七不思議」どころか「十六不思議」になってしまったとか…。さながら、不思議のテーマパークといった感じですね。数が多ければいいということではないですが、八坂神社はそれほどに不思議に満ちた神社だということなのです。

八坂神社:京都市東山区祇園町北側625 TEL : 075-561-1126

(写真・画像等の無断使用は禁じます。)

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