京都市の中心より、やや外れた南東の地に、豊臣秀吉の“生き葬式”とも言われた“醍醐の花見”で知られる「醍醐寺(だいごじ)」があります。
醍醐寺はひと山まるごとが敷地になっていて、その広さは京都市内では最大の約200万坪を誇り、境内には国宝の五重塔や金堂、豊臣秀吉が築いた庭園がある三宝院などがあり、とても見応えのあるお寺です。この醍醐寺は山の麓の「下醍醐」と山の上の「上醍醐」に分かれているのですが、醍醐寺の真髄は「上醍醐」にあると言われています。今回は、世界文化遺産にも登録されている名刹、「醍醐寺」の話をしましょう。
五重塔は京都最古の木造建築物
醍醐寺には、上醍醐と下醍醐の広い敷地に6棟の国宝と、10棟の重要文化財に指定されている建築物があります。その中でも、京都府下、最古の木造建築物とされる国宝の五重塔は、法隆寺の五重塔、瑠璃光寺の五重塔と並ぶ日本三名塔のひとつです。醍醐天皇の冥福を祈るために朱雀天皇が建てた五重塔は、応仁の乱などの度重なる戦火や火災から難を逃れ、1000年以上の歳月が経った今でも、均整の取れた美しい姿のまま、下醍醐の伽藍に佇んでいます。
五重塔の奥にある朱塗りの弁天堂を通り過ぎと、成身院(じょうしんいん)、通称「女人堂(にょにんどう)」があります。
ここが、上醍醐の入り口。醍醐の山はそもそも、修験道の霊場だったため、女人禁制で、女性はここより先へは入れなかったのです。そのため、女性がこの成身院から山の上の諸仏に手を合わせ拝んだことから「女人堂」と呼ばれるようになったのだそうです。
醍醐寺の由来となった湧き水
女人堂を抜けて、やや勾配のある登山道を1時間ほど歩くと、ようやく上醍醐に着きます。そして、そこでまず目に付くのは石碑に描かれた「醍醐水」という文字。上醍醐に今もこんこんと湧き出る「醍醐水」は、醍醐寺という寺名の由来となった水で、ここが醍醐寺のルーツと言われている場所なのです。
874(貞観16)年、この地に醍醐寺を開いた僧侶の聖宝(しょうぼう)が、修行場を求めて醍醐山を歩いていると、山の神様である、横尾明神が突然、目の前に現れ、湧き出る水を口に含むと、「あぁ、これは醍醐味かな、醍醐味かな」と感嘆の声を上げたという伝説があります。“醍醐味”とは、本当のおもしろさや深い味わいを表現する言葉ですが、仏教の世界では「牛より乳を出し、乳より酪を出し、酪より熟味を出し、熟味より醍醐を出す。醍醐は最上なり」と言われ、“醍醐味”は、最上級の味を意味する言葉なのです。「醍醐水」は神様も醍醐味と褒め称えた、まさに名水中の名水と言うわけですね。
醍醐寺の醍醐味を味わう
醍醐寺は京都の中心部から離れていることもあって、他の人気のある社寺に比べると、訪れる人も少なく、静かでゆったりとした時間を過ごすことができます。上醍醐の名水、「醍醐水」を味わい、下醍醐の金堂や五重塔が建ち並ぶ、壮大な伽藍に圧倒されて、世界文化遺産の醍醐寺の醍醐味を感じてみてはいかがでしょうか。
醍醐寺:京都市伏見区醍醐東大路町22 TEL : 075-571-0002
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