京都を訪れると、必ず足を運ぶ場所があります。その場所とは京都市内を南北に流れる鴨川。
鴨川は、京都市の北区と右京区京北町の境界に位置する京都北山の代表的な山のひとつである桟敷ヶ岳(さじきがたけ)付近の源から、桂川に至る約33㎞の河川です。
鴨川は四季を通じて、その折々の表情を見せてくれます。初夏の今頃は柳の緑が美しく、シラサギやアオサギ、セキレイやカルガモなどの野生の水鳥に出会うことができます。
鴨川と言えば、京の風物詩である“納涼床”。三条大橋から四条大橋の間の西岸に並ぶ納涼床は見るだけでも夏の訪れを思わせてくれます。
そんな京都らしさを感じさせてくれる鴨川ですが、今回は鴨川のちょっと不思議なお話をしましょう。
鴨川の不思議
鴨川は青龍が棲む川とされていて、絶大な権力を持った白河法皇でさえ「鴨川の水」「賽の目」「比叡山の僧兵」の3つは思いのままにならないと言うほど、鴨川はよく氾濫を起こしたそうです。今の穏やかで、清らかな鴨川からは想像しがたいですが…。
ところで、この鴨川、流れている場所で川の表示が変わっているというのはご存知ですか? 京都の地を北から南に流れる鴨川は高野川と合流する出町柳までを「加茂川」と表示され、そこから桂川と合流する伏見区の下鳥羽までを「鴨川」と表示されます。同じ川なのに「かもがわ」の表示が変わるとは、不思議というか、珍しいですよね。
そして、京都の不思議のひとつでもある鴨川の不思議とは、三条から四条の川岸に、誰が測ったわけでもないのに、男女のカップルが見事に等間隔に座るという光景です。その間隔は大体、5メートルぐらいでしょうか。もちろん、観光シーズンで混み合ってくると、その間隔も2メートルぐらいに狭まってはきますが、それでも、不思議と等間隔に座るのです。その理由はわかりませんが、こんな説があります。
江戸時代の頃、三条から四条にはお茶屋が並び、芸妓さんと客である男との恋物語が繰り広げられました。中には世をはばかるというか、身分の違いなどから人目を避けて密かに会う男女が語らう場所が鴨川の川岸や大橋の下だったのです。隣のカップルの顔がはっきりと見えない距離、隣のカップルの語らいが聞こえない距離、そして、自分たちの愛の語らいが他のカップルに聞こえない距離…。これ以上、近づいて邪魔をしないでという思いは時代が変わっても変わらないということなのでしょう。愛のチカラとは不思議なモノですね。
老若男女を問わず、さまざまな世代に愛されている鴨川。初夏の鴨川をのんびりと散歩してみてはいかがでしょうか。
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