金閣寺 ~西方浄土への旅立ちを待ち続ける老松

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西に衣笠山、背後に左大文字山をひかえた、北山を代表する古寺、金閣寺(きんかくじ)。湖面に映える絢爛豪華な金色の楼閣は、古来より、見る者の心を捉え、魅了し続けています。

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この金閣寺の庭に、「陸舟の松(りくしゅうのまつ)」と呼ばれる松があります。この松は、大原の宝泉院にある「五葉の松(ごようのまつ)」、洛西の善峯寺(よしみねじ)の「游竜の松(ゆうりゅうのまつ)と並んで、“京都三松”のひとつに数えられている名松です。今回は金閣寺の当主である3代将軍・足利義満の遺愛の松、「陸舟の松」の話をしましょう。

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足利義満が造った壮大な御殿

一般的に「金閣寺」と呼ばれて、親しまれていますが、正式には「鹿苑寺(ろくおんじ)」といい、相国寺の塔頭のひとつです。

南北朝の統一に成功し、世の中に平和を取り戻した室町幕府3代将軍・足利義満は、1394(応永元)年に37歳にして将軍職を譲り、翌年に出家しました。その2年後に、義満は鎌倉時代に権勢を誇った貴族、西園寺家が所有する“北山第”と呼ばれた別荘を譲り受け、新たに「北山殿」という山荘を造営しました。これが、金閣寺の始まりです。

派手好きな義満は、壮大な御殿を造り、中国の明と盛んに貿易を行いました。それにより、中国の文化が北山に集まり、そこに室町時代までの豪華で優雅な公家の文化と、鎌倉時代に築き上げられた質素で力強い武家文化が融合されて、「北山文化」が生まれました。

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義満が1408(応永15)年に51歳でこの世を去った後、北山殿は、義満の遺言により、4代将軍・義持によって禅寺となり、義満の法名である「鹿苑院天山道義(ろくおんいんてんざんどうぎ)」から、「鹿苑寺(ろくおんじ)」と名付けられたのです。

義満が求めた浄土の世界

義満は、この地に極楽浄土の世界を思い描いて、もともとあった楼閣とその前に広がる池を造り直したと言われています。それが、金閣と呼ばれる“舎利殿(しゃりでん)”と、その舎利殿を静かに映し出す“鏡湖池(きょうこち)”です。

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舎利殿は3層構造になっていて、2層目と3層目には漆に金箔が貼られた豪華なもので、鏡湖池には葦原島、鶴島、亀島と呼ばれる島を作り、大小の石を配置しました。義満はその鏡湖池に舎利殿の東側にある船着き場から舟を漕ぎ出し、水面に揺らめく金色の舎利殿を心に映して、浄土の世界に思いを馳せたのでしょう。

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その義満の気持ちを表しているかのように、今にも帆を上げて船出しそうな姿の松があります。それが「陸舟の松(りくしゅうのまつ)」と呼ばれる松です。

金閣を見つめ続ける「陸舟の松」

金閣寺を訪れる人の中には、金閣に目が奪われて、「陸舟の松」を見逃す人も多いそうですが、それは、鏡湖池の東側、方丈の隣りにある書院の庭にあります。帆を張った舟のような形に作られたことから、「陸舟の松」と呼ばれるようになったと言われています。

この松は、義満が盆栽から育て、植栽された五葉松ですが、もし、それが本当であれば、樹齢は600年を超えていることになります。ところが、この「陸舟の松」を見る限りでは、勢いがあって、若々しくすら見え、とても樹齢600年を超える老松には見えません。

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「陸舟の松」は金閣のある西の方向を向いているのですが、その姿は、西方浄土へ航海しようとしていることを意味していると言われています。浄土に生まれ変わることを願った義満の思いが宿り、青々として壮健に見える老松「陸舟の松」は、西方浄土に旅立つ時が来るのを待ち続けているのかもしれませんね。

心を惹き付ける金閣の輝き

1994(平成6)年に世界文化遺産に登録された金閣寺。その金閣(舎利殿)は1950(昭和25)年に、学僧の放火によって全焼してしまいました。この事件は三島由紀夫の小説「金閣寺」や水上努の小説「五番町夕霧楼」、「金閣炎上」などで書かれているので、よく知られている出来事ですが、日本人にとっては大きな衝撃となった事件です。

現在の金閣は、1955(昭和30)年に再建されたもので、その後、1987(昭和62)年には全面的に金箔が貼り替えられ、2003(平成15)年にはこけら葺きの屋根の修復工事が行われました。義満が西方浄土への思いを寄せて、見つめた金閣の荘厳な輝きは、今尚、多くの人たちの心を惹き付けています。

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金閣寺(鹿苑寺):京都市北区金閣寺町1 TEL : 075-461-0013

(写真・画像等の無断使用は禁じます。)

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