京都・出町柳から叡山電車に乗って約40分、終点の鞍馬に到着。駅から数分ほど緩やかな坂道を上っていくと朱色の立派な仁王門が見えてきます。
ここが鞍馬天狗や牛若丸の伝説などで有名な鞍馬弘教の総本山、鞍馬寺(くらまでら)の入り口。今回はパワースポットとしても人気のある「鞍馬寺」の話をしましょう。
九十九折りは険しい坂道
鞍馬寺は標高569メートルの鞍馬山の中腹にあります。仁王門の先にある鞍馬の鎮守である由岐神社と本殿金堂の間には九十九折参道(つづらおりさんどう)という坂道がありますが、この坂道は清少納言が『枕草子』で“近うて遠きものは くらまの九十九折という道”と書いていることから、とてもキツい坂道です。ですから、足に自信のない人にはケーブルカーがお勧め! 仁王門の近くにある山門駅からケーブルカーに乗れば本殿金堂下の多宝塔駅まで、わずか2分。多宝塔駅から本殿金堂までは155段の石段と坂道を登ることになりますが、それでも九十九折参道をスルーできるわけですから、坂道はしんどい!と思う方は迷わずケーブルカーに乗って下さい。
ただし、鞍馬寺の雰囲気をたっぷりと堪能したい人は少々、辛くても九十九折参道を歩いて欲しいと思います。と言うのは、鞍馬寺のある鞍馬山はその昔、“暗部山(くらぶやま)”と呼ばれていて、鬱蒼とした森が広がっていた山だったそうですが、今も杉や桧の巨木が立ち並び、イノシシやシカなどの野生動物が多く棲んでいる原始の森林の姿を残しており、九十九折参道を歩くことで、山全体が境内である鞍馬寺の信仰パワーを感じることができるからです。
今も残る興味深い言い伝え
奈良にある唐招提寺の開祖として知られる鑑真和上。その鑑真和上といっしょに中国から来た一番若い弟子である鑑禎上人(がんちょうしょうにん)が、鞍馬山の地に毘沙門天を安置したのが鞍馬寺の始まりとされています。こんな不思議な言い伝えが残されています。
『ある日の夜、上人は夢の中で北の方角に霊地があるとお告げを受け、鞍を白馬に導かれて鞍馬に着きました。その夜、山中で寝ていた上人は鬼女に襲われ、その鬼女を倒そうと錫杖(しゃくじょう)で鬼女の胸を刺しても、鬼女を倒すことができません。身の危険を感じた上人は大木の後ろに身を隠したところ、突然、大木が鬼女の上に倒れ、鬼女は息絶えてしまいました。安堵していると、今度は倒れた大木から毘沙門天が現れたのです。その意味を悟った鑑禎はそこに毘沙門天を祀る庵を建てることにしたのです。
それから年月が経ち、今度は観音さまを信仰する都の役人、藤原伊勢人(ふじわら いせんど)という人物が、これもまた白馬に導かれて鞍馬にやって来ました。そこで、伊勢人は毘沙門天が祀られた庵を見つけ、「私は観音さまを祀りたいのに、どうして毘沙門天がここにあるのだ…」と困り果ててしまいました。するとどこからともなく「観音も毘沙門天も人を救うことには変わりない」という声がして、これは神様のお告げだと悟った伊勢人は毘沙門天と観音さまの両方を祀るための大きな伽藍をそこに建てたのでした。』
なかなか興味深い話ですよね。言い伝えと言えばそれまでですが、もともと鞍馬山は信仰の霊場とされている場所だけに、本当にあったことなのではと思いたくなります。
鞍馬寺は京都屈指のパワースポット
鞍馬寺は言い伝えが不思議なだけでなく、不思議な場所がいろいろとある寺院です。例えば、本殿金堂の横に「瑞風庭(ずいふうてい)」という枯山水の庭園がありますが、そこにある盛り砂はなんとUFOのような形をしてるのです。
これは650万年前に人類を救済するために鞍馬山に降り立った護法魔王尊が金星から乗ってきた乗り物「天車(てんしゃ)」をかたどったものだそうです。そして、鞍馬寺の裏の山奥には金星から降臨した護法魔王尊を祀った「奥の院魔王殿」というお堂まであります。
650万年前と言えば、人間の起源とされる頃。そんな大昔に金星と鞍馬山が関係していたとしたら……、考えるだけで壮大なロマンすら感じます。
鞍馬の山は尊天(千手観世音菩薩、毘沙門天王、護法魔王)の気が満ちている聖域。そして、山岳霊場の神聖な雰囲気が漂う鞍馬寺は不思議なエネルギーが集まるパワースポットなのです。
鞍馬寺:京都市左京区鞍馬本町1074 TEL:075-741-2003
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