嫌なことや災難から逃れたいときに唱えるおまじないで、よく『くわばら くわばら』と言いますよね。でも、どうして『くわばら くわばら』と言うのでしょう…。何か特別な意味合いがあるような気がしませんか? それには、本当のことかどうかは定かではありませんが、菅原道真公に由来するという説があります。
日本最強の怨霊
菅原道真公は太宰府天満宮や北野天満宮などのいわゆる天神さんに祭られている学問の神様として有名ですが、日本最強の怨霊としてもその名を馳せた人物でもあるのです。
公家に生まれた道真は宇多天皇に重用され、従二位にまで昇進しましたが、それを快く思わない藤原氏らに謀られ、九州・太宰府に左遷され、怨みを持ったまま死んだ道真は怨霊となり、京の都に次々と災いをもたらしたのです。
そんなある日、京の都に強烈な雷を伴う大雨が降ったのですが、道真の屋敷のあった町には不思議と雷が落ちなかったのです。その町の名前が「桑原町」で、京の都を襲った落雷は道真公の怒りだと恐れた民衆は、雷が落ちない桑原町で『くわばら、くわばら』と手を合わせて天を仰いだと言われています。それがいつの間にか習慣化し、今でも『くわばら くわばら』とおまじないとして唱えるというわけです。
不自然な町
ところで、道真公の屋敷があったとされる「桑原町」(今の読み方は「くわはらちょう」)は現在でもある地名です。京都御所の南側にある丸太町通の道路上の20平方メートルもないような狭い一角が「桑原町」という地名になっています。そんな場所ですから、もちろん、人が住むような建物もありません。道路のど真ん中ですから。
現代になっても道路上の一角に「桑原町」と地名を付けて残されているのは、とても不自然に思うのですが、やはり何か理由があるのでしょう。もしかすると、京都の人は今でも道真公の怨霊の祟りを恐れているのかも…。その理由を知りたいと思ったりするのですが、やはり、ここは『くわばら くわばら』で余計な詮索はしないほうが良さそうです。これも京都の七不思議のひとつということでとどめておくのが無難でしょうね。くわばら、くわばら…。
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