京町家~涼しさを呼ぶ先人の知恵

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『徒然草』の著者、兼好法師が生きた鎌倉・南北朝の時代も京都の夏は暑かったようで、「暑き此(ころ)わろき住居(すまい)は、堪えがたき事なり」と書き残しています。夏が蒸し暑い京都では、その暑さをしのぐために、京都人は昔から様々な知恵を絞りながら暮らしてきました。京都の伝統的な住まいである“京町家”にも、京都の夏を涼しく暮らすための知恵や工夫がいろいろと施されています。今回は京町家の涼しさの秘密について、話をしましょう。

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京町家とは

京町家は“うなぎの寝床”と呼ばれるように、間口が狭く、奥行きの長いカタチになっていて、その原型ができたのは江戸時代中期と言われています。当時の京町屋の住人は商人や職人であったことから、通りに面して商いを行い、奥で生活を営む「職住一体」の居住スタイルが基本となっていました。

夏の暑さをしのぐための工夫

京町家は、通り沿いに密集して建てられていて、家と家とが接しており、住環境としては決して良いものではありませんでした。そこで、京都人は昔から、夏の暑さをしのぐために家の中に風を通す工夫を行ってきたのです。

京町家の外側には、通りに面した町屋の表側に「表格子」と呼ばれる格子があります。格子は風通しや採光に優れていて、しかも外から中を見えにくくするという防犯の役割も兼ねています。

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また、中二階の正面には「虫籠窓(むしこまど)」と呼ばれる格子状の窓があり、その内側には障子戸が付いていて、夏にその障子を開けておくと、風が通り、中二階や屋根裏にこもった熱が抜け、下の部屋が涼しくなる効果があります。

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京町家の中で風を通す役割をしているのが「庭」です。京町家には庭がふたつあります。そのひとつが「通り庭」。庭と言っても、家の表から奥までを貫く“土間”のことですが、この土間が風の通り道になるのです。

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そして、もうひとつの庭が「坪庭」。坪庭は町屋の特徴のひとつですが、家の真ん中あたりに作られていて、夏になると、この坪庭に打ち水をすることにより、暑い表通りとの温度差をつくり、家の中に風を呼び込むという作用があります。また、坪庭の緑や、風にそよぐ木々の葉擦れの音は目や耳に涼を与えてくれます。

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京町家の夏を涼しく暮らす工夫は、建物の造りだけではありません。それは、室内の装い、つまり、インテリアにも涼を呼ぶ工夫があるのです。夏になると、町屋では「建具替え」と言って、ふすまや障子を、簾(すだれ)や簾戸(すど)に替えて、風通しをよくし、見た目にも涼しさを感じられるようにします。また、足下にはひんやりとして心地よい「網代(あじろ)」や「藤筵(とむしろ)」といった敷物が敷かれます。これも涼を感じる工夫のひとつです。

自然との共生から生まれた京都人の知恵

京都は三方を山に囲まれた盆地の中にあるため、寒暖の差が激しいところです。京都人はそんな自然環境に対応するために、京町家にいろいろな工夫を行ってきました。それは、京都人の日々の暮らしから産み出された自然との共生の知恵だったのです。先人の知恵にはただただ、感心するばかりですね。

京町家は見学ができます。京都に遊びに来た折りに、ちょっと寄ってみてはいかがでしょうか。

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四条京町家 京都市下京区四条通西洞院東入郭巨山町11 

(写真・画像等の無断使用は禁じます。)

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