小野篁 ~あの世とこの世を行き来した男

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京都・東山に「六道さん」と呼ばれるお寺、「六道珍皇寺(ろくどうちんのうじ)」があります。その名前から、何か珍妙なお寺を連想する方もいらっしゃるかもしれませんが、このお寺は、“あの世とこの世を結ぶ寺” と言われ、ミステリアスなお寺なのです。

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その由縁は本堂の裏にある井戸にあります。その井戸は冥界への入り口とされていて、なんと、この井戸から地獄へ通っていた人物がいたのです。その人物の名は小野篁(おののたかむら)。今回は、“冥界と通じる得体知れず” と恐れられた「小野篁」の話をしましょう。

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小野篁は天才だった

802(延歴21)年に生まれた小野篁は、身長は180センチを超える巨漢の持ち主で、剣術や弓矢、乗馬など武芸全般に秀でていたとされ、勅撰集に12首も選ばれる名歌人でもあり、漢詩については「日本の白楽天」と称せられるほど、文武に長けた天才だったようです。いわゆる、エリートだったわけですね。

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ところが、篁は本業とは別に、こっそりと副業を持っていました。今で言うダブルワークを実践していた篁は、昼間は朝廷の官吏として内裏に勤務し、夜になると、六道珍皇寺の井戸から冥界へ下り、地獄の閻魔大王に仕えたと言われています。

小野篁の役割は?

仏教では、人は死んだら、取り敢えず、地獄に落ち、そこで、生前の行いについて審議されると言われます。地獄には今で言う裁判官が10人いて、1人目の裁判官が “殺生”、2人目が “盗み”、3人目が “邪淫の業”、4人目が “嘘” について取り調べを行い、その結果を受けて、五人目の裁判官、閻魔大王が “六道”、すなわち、“地獄” 、“餓鬼”、“畜生”、“修羅”、“人間”、“天上” の6つの世界のうち、どの世界に生まれ変わるかを決めます。篁はその閻魔大王の補佐役として、亡者が生まれ変わる世界を言い渡される折りに、亡者の生前の行いに基づいて閻魔大王が判断するための助言をしたと言われています。

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同僚を助けた小野篁

こんなエピソードが残されています。

右大臣だった藤原良相(ふじわらのよしみ)が病の末、亡くなってしまいました。三途の川を渡って、閻魔大王の前に引き立てられると、なんと大王の隣には同じ朝廷で働いていた小野篁の姿があったのです。良相は「篁がなぜ、こんなところに!!」と唖然としていると、篁は大王に「この人は、正直で良い人です。どうか私に免じてこの人を許してあげてください」と進言すると、大王は「お前がそう言うなら、赦してやろう」と言って、良相を生き返らせたのでした。

その後、朝廷で篁に出会った良相はお礼を言うと、篁は「あれは、あなたが以前、私を助けてくれたので、そのお礼までのこと。ただ、私があそこにいたことは誰にも言わないように…」と言って、堅く口止めされたと言います。そして、良相はいよいよ篁はただならぬ男だと恐れ、一目を置くようになったということです。

小野篁は超人だった!?

このように、冥界を行き来し、閻魔大王に仕えた小野篁は、果たして人間だったのでしょうか…。安倍晴明とはまた違った意味で、小野篁は“超人” だったのかもしれません。

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六道珍皇寺の閻魔堂には閻魔大王と小野篁の木像が並んで安置されています。一緒に並んでいるところからすると、閻魔様も篁を結構、頼りにしていたのかもしれませんね。

六道珍皇寺:京都市東山区大和大路通四条下ル4丁目小松町595  TEL : 075-561-4129 

(写真・画像等の無断使用は禁じます。)

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