京都怪異譚 その11『幽霊子育飴~飴を買いに来る幽霊』

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艶やかな琥珀色をした飴(あめ)。一粒、口に入れると、素朴な甘みが口の中にほわ~っと広がります。

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麦芽糖とザラメ糖だけで作られたこの飴は、今から400年ほど前から東山にある六道珍皇寺の門前にあった飴屋で売られていましたが、その飴屋には毎晩のように女の幽霊が現れ、飴を買って帰ったいう伝説が残されています。

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夜な夜な飴を買いに来る女

この飴屋がある地域は、“鳥辺野(とりべの)”と呼ばれ、「鳥の鳴かぬ日はあっても、鳥辺野の煙の見えぬ日はない」と言われるように、昔から有名な京の都の埋葬地だった場所です。

ある日の夜、その飴屋の主人が店じまいの支度をしていると、戸を叩く音がしました。「今頃、お客さん…?」と思いながら、戸を開けるとそこには、髪を長く垂らし、肩を落とした女が立っていたのです。顔は影になってよくわかりませんが、その出で立ちは背筋がゾクッとするような恰好でした。

女はか細い声で「飴を売って下さい…」と言って、薄汚れた茶碗を主人に差し出しました。主人は茶碗に飴を盛ると、女は1文銭を置いて、かき消すかのように帰って行きました。「妙な女だな…」と気味悪く思いながら、その夜は眠りにつきました。

そして、翌朝、銭函を開けて中を見ると、昨夜、確かに女から受け取って入れたはずの1文銭はそこにはなく、その代わりに、しきみの葉が1枚入っていたのです。“しきみの葉”とは仏前や墓前に供える植物の葉のことですが、それを見た主人はますます気味が悪くなってしまいました。

それから毎晩、女は飴を買いに来ましたが、その気味悪さの余りに、ついに主人は寝込んでしまったのです。それを知った近所の若者たちはその不審な女を捕まえてやろうと、飴屋で待ち構えることにしました。

女はいつもの時間に現れ、飴を買って帰っていったので、若者たちは女の後を追いかけて行くと…。なんと、その女は鳥辺野に続く道に入って行くではありませんか。「もしかして、あの女は…」と思っていると、女性はすぅーと姿を消してしまいました。

その女は幽霊だった!

若者たちから、その出来事を聞いた主人は、あくる日に、お寺へ出かけ、和尚さんにこれまでのことを話しました。その話を聞いた和尚さんは「まさかとは思うが…」と漏らしたのです。その時、和尚さんの脳裏には、10日ほど前に、それらしい若い女を土葬にしたことが浮かんだいました。

和尚さんと主人は急いで女が消えた辺りに行くと、墓の中から、かすかに赤ん坊の泣き声が聞こえてきました。そこで、和尚さんと主人はその墓を掘り返してみると、なんとそこには女の死骸の上で、飴をしゃぶりながら泣いている可愛い赤ん坊がいたのです。その女の幽霊は子どもを身籠もっている時に亡くなり、土葬にされてしまった女だったのです。

女が亡くなった後も、女のお腹の中で赤ん坊は成長し、この世に生まれました。しかし、女は自分の乳を与えることができないため、赤ん坊を不憫に思った女は、幽霊になって毎夜、飴を買い、赤ん坊に与えていたのです。このようなことがあって、この飴は、いつしか「幽霊子育飴(ゆうれいこそだてあめ)」と呼ばれるようになりました。

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赤ん坊は8歳になるまで飴屋で育てられ、その後、仁和寺(にんなじ)の近くにある立本寺(りっぽんじ)というお寺に引き取られました。そして、お坊さんになって、68年の生涯を生きたと言われています。

因みに、「ゲゲゲの鬼太郎」の鬼太郎誕生のエピソードは、この伝説がもとになっているのだそうです。

我が子を思う、母親の愛情

この話は幽霊になった女性の話ですが、それは恐ろしい話ではなく、幽霊になってまでも我が子を思う、母親の深い愛情が伝わってくる心温まる話なのです。母親が自分の子を殺すような今の時代にこそ、親が子を思う気持ちをもっと大切にすべきなのではないでしょうか。

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※「幽霊子育飴」は今も「みなとや幽霊子育飴本舗」で販売されています。

  みなとや幽霊子育飴本舗:京都市東山区松原通大和大路東入ル二丁目轆轤(ろくろ)町 TEL : 075-561-0321

(写真・画像等の無断使用は禁じます。)

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