もみじの永観堂 ~みかえり阿弥陀が語りかけてくるお寺

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京都には紅葉(もみじ)の名所と言われるお寺がいくつもありますが、南禅寺の北にある「永観堂(えいかんどう)」も、そのひとつです。今回は“もみじの永観堂”と呼ばれるほどに、紅葉で有名な「永観堂」の話をしましょう。

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創建当時から紅葉で有名だったお寺

秋が深まる頃になると、境内にある約3,000本の紅葉は見事に赤く色づき、永観堂を訪れる人たちを魅了します。

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永観堂は、863(貞観5)年に公家の藤原関雄(ふじわらのせきゆう)が所有する別荘を弘法大師の弟子であった真紹僧都(しんじょうそうず)に寄進したことが始まりとされています。

その藤原関雄は「古今集」に『おく山の  岩がき紅葉  散りぬべし  照る日の光  見る時なくて』という歌を載せていますが、その歌にある「岩がき紅葉」は、今も境内の奥にそびえる東山の斜面にしっかりと根を下ろし、秋になると真っ赤に色づきます。この「岩がき紅葉(もみじ)」が既に「古今集」にあるということは、永観堂は創建当時から紅葉で有名なお寺だったということです。お寺の歴史よりも古い紅葉があることも、“もみじの永観堂”と呼ばれる由縁なのでしょう。

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珍しい姿をした阿弥陀如来像

永観堂は紅葉だけではありません。長い歴史を持つ永観堂には、2つの国宝と数多くの重要文化財があります。その重要文化財のひとつが阿弥陀堂に祀られている「阿弥陀如来立像(あみだにょらいりつぞう)」です。

ヒノキで作られた阿弥陀像は身丈が77センチで、決して大きな像ではありませんが、端正で穏やかな表情が印象に残る阿弥陀像です。ところで、この阿弥陀像、ちょっと変わっていて、何かに語りかけているかのように、顔を左に向けているのです。その姿から、この阿弥陀像は「みかえり阿弥陀」と呼ばれています。でも、どうして、この阿弥陀様は左を向いているのでしょうか?

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阿弥陀様が振り向いたワケは?

このお寺は一般的に永観堂と呼ばれていますが、永観堂は通称で、正式な寺名は「聖衆来迎山(しょうじゅらいごうさん)無量寿院(むりょうじゅいん)禅林寺(ぜんりんじ)」です。永観堂と呼ばれるようになったのは、このお寺の第七世住持である永観律師(ようかんりっし)に由来しているのです。〔※寺名は“えいかん”ですが、律師は“ようかん”と読みます。〕

律師は1日に6万遍もの念仏行を行い、“念仏宗永観”と呼ばれた僧で、東大寺別当(寺務を統括する僧)を務めた高僧です。

1082(永保2)年2月15日の明け方のことです。律師が冷えきったお堂で日課の念仏を唱えながら、阿弥陀如来の周りを行動(ぎょうどう:仏道の修行)していると、突然、阿弥陀如来が須弥壇(しゅみだん:仏像などを安置する一段高くなっている場所)から降りてきて、律師を先導するかのように行動を始めたのです。これに驚いた律師が立ち止まると、阿弥陀如来は左に振り返って、律師に対して「永観、遅し」と告げたと言われています。それ以来、阿弥陀如来の首の向きは元に戻らず、今も左に振り返った姿のままなのです。

左を振り返った阿弥陀如来の姿は「思いやり深く周囲を見つめる姿勢」「愛や情けをかける姿勢」「遅れた者たちを待つ姿勢」といった解釈がされていますが、実際に「みかえり阿弥陀」を間近で見ると、鼓動が聞こえてきそうで、心に何かを語りかけてくるように感じます。

夜間のライトアップで幻想的な紅葉を味わう

永観堂は毎年、紅葉が盛りの11月頃に夜になるとライトアップされ、夜の紅葉が楽しめます。漆黒の境内に、ライトに照らされて浮かび上がる紅葉は幻想的で、昼間に見る紅葉とはまたひと味違った風情があります。

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ライトアップの時間帯も本堂や阿弥陀堂の拝観はできますので、慈愛に満ちた「みかえり阿弥陀」に手を合わせた後、ゆっくりと夜の紅葉を眺めて、日常の喧騒に疲れた心を癒やしては如何でしょうか。

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禅林寺(永観堂):京都市左京区永観堂町48 TEL : 075-761-0007

(写真・画像等の無断使用は禁じます。)

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