7月2日に祇園祭の山鉾巡行の順番を決める「くじ取り式」が行われ、いよいよ10日からそれぞれの鉾町で鉾や曳山の組み立てが始まります。祇園祭のメインイベントと言えば、何と言っても7月の17日と24日の2回行われる山鉾巡行ですが、祇園祭には通好みの祭がもうひとつあるのです。それは「屏風祭」。今回は祇園祭とはまた違った趣きのある「屏風祭」の話をしましょう。
静の祭
祇園祭が“動の祭”なら、屏風祭は“静の祭”。屏風祭は祇園祭の宵山の頃(14日~16日)に合わせて行われ、山鉾町にある旧家や老舗がそれぞれ所蔵する美術品や調度品などを飾り、祇園祭を見物に来た人たちに見てもらうという催しです。
祭と名が付いているので、屏風でも持って踊るのかと思いきや、さしたる行事もイベントもなく、訪れた人が家の外から格子越しにその家が所有する美術品や調度品などを見ながら、そぞろ歩くというのが屏風祭の楽しみ方なのです。祭と言うわりには地味ですが、それが京都の味わいでもあるのです。
屏風祭は「ハレの日」
飾られるものに屏風が多いので「屏風祭」と呼ばれるようになったそうですが、屏風以外にも、着物や甲冑、道具類などが飾られ、その中には国宝級、重文級のものも多くあります。そういった貴重なものを一般の家やお店で所蔵して、管理しているとはホント、驚きですよね。
かつての京の町衆は財力が絶大で、世界中から美術品を集めることができました。山鉾の装飾に使われている、ペルシャや中国から伝えられたゴブラン織りのタペストリーや絨毯もそうです。そして、その町衆の財力が、江戸時代の京都の美術品、工芸品を守り、育ててきたとも言われています。それはきっと誇りだったに違いありません。
当時、祇園祭の見物で多くの人が賑わう宵山は、町衆たちにとって、自分たちが秘蔵する美術品や工芸品を祭り見物に来た人たちに見てもらう“ハレの日”だったのでしょう。そして、今でもその思いと伝統を守り続け、洗練された美意識で飾り、人をもてなすという心の表れとして、屏風祭が行われているのではないかと思うのです。
代々受け継がれてきた美術品や工芸品からは、祇園祭とともに生きてきた京都の町衆の文化をうかがうことができます。1年のうちで、わずか3日間だけ開かれる「静の美術館」に一度、立ち寄ってみてはいかがでしょうか。
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