京都の夏の味と言えば、「鱧(はも)」を挙げる人は多いでしょう。歯が鋭く、ちょっと怖い顔をしている鱧は、昔から大阪の天神祭や京都の祇園祭には欠かせない魚と言われています。特に祇園祭は「鱧祭り」と呼ばれるほどで、今の時期は鱧の需要が一気に高まります。今回は梅雨の雨を飲んで旨くなり、梅雨の明ける7月になると脂が乗り始め、旬を迎える「鱧」の話をしましょう。
鱧とは?
鱧はウナギのように細長く、全長は約1メートルから2メートルほどになる、ウナギ目・ハモ科の魚です。その怖い顔つきの通り、性格は獰猛で、鋭く尖った歯でイカやタコ、エビやカニなどを捕食する肉食の魚。「はも」という名前も、噛みつくことから「食む(はむ)」がなまって、いつしか「はも」になったとか…。ところで、そんな鱧がどうして京都の夏の味になったのでしょうか。
京都の夏に何故、鱧なのか
まだ、交通手段がなかった頃、海に面していない京の都には、行商人の手によって兵庫県の明石や淡路島から、生きた魚が運ばれていました。しかし、夏になると、ほとんどの魚は暑さのため、都に着く前に死んで、腐ってしまいました。ところが、獰猛で生命力の強い鱧だけは生きていたのです。このように夏の炎天下でも生きた状態で入手でき、しかも、7月の祇園祭の頃に旬を迎えるということで、夏の京都には鱧が欠かせない食材となったのです。
鱧は桃山時代の頃から食べられるようになったそうですが、小骨が多いために、叩いてすり身にして食べていたのではないかと言われています。その後、いつの頃からかは定かではありませんが、京都の料理人が「骨切り」という技法を編み出し、バリエーションに富んだ鱧料理が楽しめるようになって、京都の夏の魚として鱧が定着したのです。
生命力の強い魚を食べると精がつくと言われます。鱧の落とし、鱧の山椒焼き、鱧の天麩羅、鱧しゃぶ・・・。祇園祭のコンチキチンを聞きながら、鱧の白い身に舌鼓を打つ・・・。鱧料理で京都の夏を感じてみてはいかがでしょうか。
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