安楽寺 ~悲しい物語が伝わる、法然ゆかりの名刹

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「哲学の道」の東、左京区鹿ヶ谷。なだらかな石段を上がると、そこに茅葺き屋根の小さな山門があります。ここは『住蓮山安楽寺(じゅうれんざん あんらくじ)』。京都の夏の風物詩、「中風まじない鹿ヶ谷かぼちゃ(南瓜)供養」が行われることで知られているお寺ですが、この安楽寺には、ある悲劇の物語が伝わっています。今回は法然上人ゆかりのお寺「安楽寺」の話をしましょう。

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民衆の支持を得た念仏宗

鎌倉時代の初め、法然はただひたすら“南無阿弥陀仏”と念仏を唱えることで、人は等しく極楽往生できるという専修念仏を説き、念仏宗(浄土宗)を開きました。

念仏宗は、新興階級の武士たちや、仏教に無縁だった農民や女性に広く受け入れられ、大勢の人々から支持を得るまでになりました。ところが、比叡山の僧たちは、念仏宗によって起きた“うねり”の危機感から、法然に強い敵対心を持つようになり、時の権力者であった後鳥羽上皇に専修念仏の停止(ちょうじ)を訴えたのです。

そういった状況の中、法然の弟子の住蓮(じゅうれん)と安楽(あんらく)という若い僧は、鹿ヶ谷に念仏道場を建て、法然上人の教えを広めていました。いわゆる布教活動ですね。お経に独特の節回しを付け、唄うように唱える「六時礼賛声明(ろくじらいさんしょうみょう)」が人々の間で評判になり、出家して仏門に入る者もいました。

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出家を望んだ美しい姉妹

今出川左大臣には、19歳の松虫姫と17歳の鈴虫姫の2人の娘がいました。両姫は女官として後鳥羽上皇に仕えていましたが、とても美しく、教養もあったことから、ことさらに上皇の寵愛を受けていました。しかし、そのために周りから妬まれ、また、御所での生活に馴染めず、辛い日々を過ごしていたのでした。そんな折りに、法然上人の教えに出会い、感銘を受けた両姫は、心の安らぎを求めて出家しようと思い立ちました。

心の拠り所を求めた松虫姫と鈴虫姫は、後鳥羽上皇が熊野詣での留守を狙って、鹿ヶ谷の念仏道場にやって来ました。そして、住蓮と安楽に思いを打ち明け、剃髪と出家を願い出たのです。それを聞いた住蓮と安楽は、最初はその申し出に反対しましたが、両姫の強い意志を知り、出家を認めたのです。

悲劇は起こった!

それから暫くして、京に戻ってきた後鳥羽上皇は、松虫姫と鈴虫姫が出家したことを知り、激怒しました。そして、自分の大切な女官をそそのかして、無理矢理に出家させたのではないかと因縁を付けて、法然一派に弾圧を企てました。そして、ついに、専修念仏の停止が下されたのです。

あらぬ罪を着せられた住蓮と安楽は、斬首の刑に処され、法然上人は土佐の国へ流罪。弟子の親鸞も越後の国に流罪に処せられました。これが、世に云う「承元の法難(又は、建永の法難)」です。

松虫姫と鈴虫姫は迫害から逃れるために、紀伊の国の粉河寺に身を隠していましたが、自分たちのせいで捕らえられた住蓮と安楽のことが気になって、都に戻ってきました。そして、住蓮と安楽が処刑されたことを知った両姫は、住蓮と安楽に詫びる気持ちから、鹿ヶ谷で自害したと云われています。

後に流刑地から都に戻った法然上人は、鹿ヶ谷の念仏道場を訪れ、住蓮と安楽の菩提を弔うために、御堂を建て、二人の名前をとって、「住蓮山安楽寺」と名付けたのでした。

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極楽往生を信じた住蓮と安楽

僧侶が打ち首になったというのは、歴史上、とても珍しいことだと思いますが、その最期の時まで、住蓮と安楽は師である法然の教えの通り、極楽往生を信じたことでしょう。2人の辞世の詠が残されています。

住蓮:「極楽に  生まれむことのうれしさに  身をば佛に  まかすなりけり」

安楽:「今はただ  云う言の葉もなかりけり  南無阿弥陀仏の  み名のほかには」

安楽寺は秋になると、境内が真っ赤に染まります。山門をくぐった右手に、住蓮と安楽の石塔が、そして、境内の山中に松虫姫と鈴虫姫の供養塔がひっそりと立っています。それは、今も訪れる人に、悲しい物語を伝えているのです。

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住連山安楽寺:京都市左京区鹿ヶ谷御所ノ段町21 TEL : 075-771-5360

※安楽寺は、通常、非公開の寺院です。春と秋の特別公開日のみ拝観できます。

(写真・画像等の無断使用は禁じます。)

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