寂光院 ~悲劇のヒロイン、建礼門院徳子 隠棲の尼寺

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京都市街の北にある大原の里。秋の始まりを告げるモミジが色づき始める頃、大原の里は一層、山里の風情が深まり、訪れる者の心を穏やかにしてくれます。その大原の里の少し奥まったところ(草生の里:くさおのさと)に、ひっそりと佇む小さな尼寺、寂光院(じゃっこういん)があります。今回は、悲劇のヒロイン、建礼門院徳子が余生を過ごした「寂光院」の話をしましょう。

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波瀾万丈の人生を送った建礼門院徳子

寂光院の歴史は古く、かの有名な聖徳太子が594(推古2)年に父・用明天皇の菩提を弔うために創建された寺院です。

初代住持は聖徳太子の乳母であった玉照姫(たまてるひめ)で、その後も、代々高貴な家門の姫君が住持となって、法灯を守り続けましたが、その中で寂光院を広く世に知らしめたのは、第3代住持の建礼門院徳子(けんれいもんいん とくこ)でしょう。

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建礼門院徳子は平清盛と時子の次女で、16歳の時に、第80代高倉天皇に嫁ぎ、言仁親王(のちの安徳天皇)をもうけました。しかし、その後、建礼門院は波瀾万丈の人生を送ることになるのです。

病弱であった夫の高倉天皇はわずか20歳にして崩御し、世は源平争乱の時代へと進んでいきます。安徳天皇が平家一門とともに都落ちした際に、建礼門院も同行し、一ノ谷の戦いや屋島の戦いを転戦。そして、1185(文治元)年3月、平家一門は壇ノ浦の戦いに敗れ、建礼門院は母の時子と、まだ8歳だった安徳天皇を抱きかかえて海に入水しました。

しかし、母の時子と安徳天皇は亡くなりますが、十二単を着ていた(空気の層ができて、十二単が浮き輪の役割になった)建礼門院は沈まず、海に浮いていたところを無念にも源氏方に助けられてしまうのです。なんと哀しい運命…。

その後、助けられた建礼門院はひとり京に戻され、東山の長楽寺に入り、出家します。そして、1185(文治元)年9月に我が子、安徳天皇と平家一門の菩提を弔うために、隠棲の場所となる寂光院に入りました。建礼門院、29歳のことです。

後白河法皇が流した涙 〜大原御幸

1186(文治2)年の初夏、寂光院での生活に慣れてきた頃に、思いがけない人物が現れます。その人物とは、義理の父親でる後白河法皇。法王は失意の中で大原に住まう建礼門院を案じて、はるばる都から訪ねてきたのです。

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建礼門院は話し相手もなく、滅びた平家一門と我が子である安徳天皇の冥福を祈るだけの毎日でした。法皇はその侘び住まいに暮らす建礼門院の姿を見て、涙を流し、再会を果たしたふたりは、いつまでも懐かしく語り合ったと言われています。これが“祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり…”で始まる『平家物語』に出てくる有名な「大原御幸(おおはらごこう)」のくだりです。

それからも、建礼門院は平家一門と安徳天皇の冥福を祈り続け、再び、歴史の表舞台に登場することなく、1213(健保1)年にその波乱の生涯を閉じました。

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予期せぬ災禍に見舞われた寂光院

寂光院は2000(平成12)年5月9日未明に、心ない者に放火され(犯人は未だ捕まっていません)、本堂が全焼し、重要文化財だったご本尊「六万体地蔵尊」と「建礼門院坐像」、そして、平家一門の手紙で造られたとされる「阿波ノ内侍(あわのないし)張り子坐像」も焼損してしまいました。(※現在、地蔵尊と坐像はすべて、元通りに復元されています。) 

そして、『平家物語』の「大原御幸」にも出てくる樹齢千年の松の名木「千年の姫小松」も火災の熱で傷み、2004(平成16)年に枯死してしまいました。(※現在、松の上部は伐採され、御神木として祀られています。)

後白河法皇が訪れたときに「池水に 汀(みぎわ)の桜散りしきて 波の花こそさかりなりけり」と詠まれた本堂前の西側にある庭園は当時のままの姿を残していますが、平家物語ゆかりの本堂やご本尊、そして、他の多くの文化財が焼かれてしまったことは、本当に残念なことです。

このように災禍に見舞われてしまった寂光院ですが、今も趣のある佇まいは、建礼門院徳子が過ごした当時の情景と安らぎを、訪れた人々に与えています。

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寂光院:京都市左京区大原草生町676 TEL : 075-744-3341

(写真・画像等の無断使用は禁じます。)

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