朱色の千本鳥居で知られる「伏見稲荷大社(ふしみいなりたいしゃ)」が、アメリカの世界最大の旅行口コミサイト「トリップアドバイザー」の2014年の「外国人に人気の日本の観光スポット」部門で見事に第1位に輝きました。伏見稲荷大社が金閣寺や清水寺を抑えて、外国人の人気ナンバーワンになった、その理由はどこにあるのでしょうか。今回は“お稲荷さん”と親しんで呼ばれている、「伏見稲荷大社」の話をしましょう。
1300年の歴史を誇る伏見稲荷大社
京都市伏見区にある伏見稲荷大社は全国に約4万社あると言われている稲荷神を祀る稲荷神社の総本宮。かの清少納言も足を運んだとされる伏見稲荷大社は約1300年という長い歴史を持ち、商売繁盛、産業興隆、家内安全、交通安全、芸能上達などに御利益があると言われ、毎年お正月には、西日本随一の初詣客で賑わう神社です。
外国人に人気No.1の観光スポットになった、その理由とは?
京都の中でも人気の観光名所でもある伏見稲荷大社ですが、意外なことに世界文化遺産の「古都京都の文化財」を構成する17件の文化財に含まれていません。それどころか、国宝指定も受けていないのです。それなのに、外国人観光客が数年前から激増しており、しかも、外国人の人気ナンバーワンの観光スポットになった伏見稲荷神社。外国人観光客はいったい、伏見稲荷大社の何に魅せられているのでしょうか。その答えは、「千本鳥居」など1万基以上あるといわれる、朱色の鳥居にあるようです。
伏見稲荷大社に鳥居が1万基以上もあるのは江戸時代以降、願い事が叶った御礼として鳥居を奉納する習慣が生まれ、それが今でも続いているからです。鳥居のひとつひとつには奉納した人の名前や住所が刻まれています。神域である稲荷山の斜面に狭い間隔で並んだ朱色の鳥居は、まるで赤いトンネルのようで、それが山の上まで連綿と続く様は神秘的で、妖艶にすら感じます。
山の中腹を過ぎたところに「四ツ辻」という場所があるのですが、このあたりまで来ると観光客も少なく、静寂の中、朱と緑の空間に放り込まれた感覚になります。朱色の鳥居の間から、キツネの面を被った巫女がひょいと顔を覗かしそうな、そんな不思議な気持ちにさえなります。外国人も、この鳥居が立ち並ぶ風景、そして、鳥居の朱色と山の緑のコントラストに魅力を感じるとか…。他の京都の観光地のように建物が建て込んでおらず、自然が豊かにあることも、外国人の心を捉えるポイントになっているようです。
日本人の信仰心と感謝の気持ちが作った神社
伏見稲荷大社は庶民の信仰の社であり、神様と自然と人とが共生する社叢(しゃそう)として稲荷山を大切にしてきました。そして、日本人の信仰心と感謝する気持ちが、今の伏見稲荷大社のカタチを作ったのです。外国人がどこまでその意味を理解しているかはわかりませんが、鳥居の色と稲荷山の自然に美しさという魅力を感じているなら、それは日本人にとって喜ばしいことではないでしょうか。
伏見稲荷大社:京都市伏見区深草薮之内町68 TEL:075-641-7331
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