養源院 ~血天井と天才絵師の絵

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三十三間堂の東隣にある「養源院(ようげんいん)」は、戦国一、数奇な運命をたどったとされる浅井三姉妹の茶々(ちゃちゃ)、初(はつ)、江(ごう)のうち、茶々と江のゆかりのある人物の菩提が弔われている寺院です。

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養源院はNHKの大河ドラマ『江~姫たちの戦国』が2011年に放送されて以来、訪れる人も増えたようですが、血天井と江戸時代の絵師・俵屋宗達の絵があることでも、知られるお寺なのです。今回は織田、豊臣、徳川の女性にゆかりのある「養源院(ようげんいん)」の話をしましょう。

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お市とその娘たちの祈りのお寺

近江北部の戦国武将・浅井長政は織田信長の妹であるお市(おいち)と政略結婚しましたが、後に信長との同盟に離反し、“姉川の合戦”で、織田・徳川の連合軍に敗れ、自ら命を絶ってしまいました。その後、残されたお市と三人の娘は戦乱の世に翻弄され、数奇な運命を辿ることになるのです。

秀吉の側室(淀殿)だった三姉妹の長女・茶々は、1594(文禄3)年に父、浅井長政の菩提を弔うために、21回忌の法要の時に、秀吉に願って、養源院を創建しました。普通に考えると、信長を裏切った長政の菩提寺など建てることはできませんが、それを許したということは、秀吉はよほど茶々に惚れていたのでしょうね。

その後の四半世紀の間で、豊臣家は滅亡し、家康の時代へと移っていきました。養源院もまた、創建から25年後の1619(元和5)年に落雷により、焼失してしまいます。ところが、養源院は1621(元和7)年に三姉妹のうちの三女、江によって再建されることになったのです。この時、江は徳川2代将軍・秀忠の正室だったわけですが、この再建には江の策略があったと言われています。その策略とは…。

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今も残る「血天井」に込められた思い

養源院の本堂と廊下の天井は「血天井」と呼ばれ、その天井には血で染められた跡が無数に残っています。

かの有名な関ヶ原の合戦の直前に、豊臣方の武将・石田三成が率いる4万の軍勢が、武将・鳥居元忠を筆頭にした約2千の徳川方の兵がいる伏見城に攻め入るという「伏見城の戦い」がありました。圧倒的な兵力の違いにより、必死の抗戦も空しく、最後まで残った鳥居元忠ら380余名は伏見城の「中の御殿」という場所に集まって、自刃したのでした。

その場所の床板にはその時に流れたおびただしい血が染み付き、いくら洗っても、削っても、その血の痕は消えません。それを知った家康は彼らの供養として、その床板を外し、「決して床に使ってはならぬ」と命じ、養源院などのいくつかのお寺の天井板として使われることになったのです。そこで、徳川2代将軍・秀忠の正室である江は徳川の忠臣たちを祀るという名目を立てることによって、徳川が滅ぼした豊臣の造った寺、養源院を再建することになったのです。養源院はお市の娘たちの祈りが込められたお寺なんですね。

天才絵師の出世作

養源院にはもうひとつ、有名なものがあります。それは、重要文化財にも指定されている杉戸絵と襖絵です。

杉戸絵は分厚い杉の板の引き戸に架空の動物の絵が描かれており、『唐獅子図』、『波に麒麟図』、『白象図』の3点。襖絵は『金地着色松図』の1点。これらの絵は桃山時代から江戸初期に活躍したとされる絵師・俵屋宗達(たわらやそうたつ)によって描かれたものです。

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俵屋宗達と言えば、国宝の『風神雷神図屏風』が代表作ですが、この養源院の杉戸絵と襖絵は宗達の出世作と言われています。

養源院の再建当時、絵の制作を狩野派に依頼していましたが、遅々として制作が進まないことに業を煮やした江は、浅井氏ゆかりの尾形光琳(おがたこうりん)の祖父・宗柏(そうはく)や本阿弥光悦(ほんあみ こうえつ)に適任者を探させたところ、当時、無名に近かった扇絵の職人、俵屋宗達に白羽の矢が立ったのです。宗達はこの杉戸絵と襖絵によって、世にその名を知らしめることとなり、後半生は多くの大作を手掛けました。

杉戸絵の題材になっている「唐獅子」と「白象」は普賢菩薩、文殊菩薩の乗り物とされていて、宗達はそれを描くことによって、非業の死を遂げた徳川の家臣たちの霊を慰めたと言われています。

どの絵も構図は大胆で、エネルギッシュな筆遣いとモダンなタッチはとても江戸時代に描かれたものだとは信じられないほどで、現代でも違和感のない、現代感覚に溢れた作品として通用しそうです。因みに、ノーベル賞を受賞した湯川先生も宗達の絵に対して「天才の仕事」と褒め称えたそうです。

日頃の喧噪から、ひととき離れて、リアルな血天井と天才絵師の絵に圧倒されてみませんか。

養源院:京都市東山区三十三間堂廻町656 TEL:075-561-3887

(写真・画像等の無断使用は禁じます。)

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